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あふれカエル、外来種 生態系懸念 和歌山・田辺に「アフリカツメガエル」

 外来種の「アフリカツメガエル」が和歌山県田辺市で大繁殖している。もともと生息していた昆虫を襲って食べるため、生態系への悪影響が心配されている。この2年半余りで約4500匹が捕獲・駆除されたが根絶は難しいのが実情だ。

 田辺市にある鳥の巣半島。ため池に沈めていた網を引き揚げると、黒っぽいカエルが数十匹、バチャバチャと跳ねた。後ろ脚に大きな水かきとツメがある。アフリカツメガエルだ。
 網は地元の和歌山県立田辺中学・高校の生物部の生徒たちが仕掛けていた。「このため池で見つかったことはなかった。生息場所がまた増えてしまった」。生物部顧問の土永(どえい)知子教諭(57)が表情を曇らせた。
 きっかけは2007年。和歌山県在住の自然写真家、内山りゅうさん(54)が、見慣れない姿のオタマジャクシが泳いでいるのに気付いた。その後の調査でアフリカツメガエルの成体も多数見つかるようになった。生物部の調査では、半島で生息が確認された池は、昨年5月時点で19カ所だったのが今年6月には28カ所に増えた。カエルの胃の中を調べると、トンボの幼虫(ヤゴ)やゲンゴロウの一種などが見つかり、池にすむ在来の水生昆虫を食べていることが分かった。
 兵庫県立大の太田英利教授(爬虫〈はちゅう〉両生類学)は「アフリカツメガエルは様々な水生動物を大量に食べる。ヤゴやゲンゴロウ類などの在来種はすむ場所を失うことになる」と指摘する。
 生物部ではこれまでに約4500匹を捕まえたが、ポンプで水を抜いて一度駆除した池でも再び姿を現す。土永教諭は「泥の中に隠れたカエルまで捕獲するのは難しい」。

 ■研究用や熱帯魚の餌に需要
 アフリカツメガエルは、これまで千葉県などでも野外で確認され、兵庫県・淡路島でも学会の会報で今年、報告された。生物学の研究用のほか、大型の熱帯魚アロワナの餌としても需要があり、売買されている。ネット上には養殖方法を指南するサイトもあり、大きな個体は1匹数百円から2千円ほどの値段がつく。
 業者や個人が養殖していたカエルが逃げ出したり捨てられたりした可能性がある。すでに研究用や餌として広く使われているため、利用の規制も難しい。外来種に詳しい自然環境研究センターの戸田光彦主席研究員は「アフリカツメガエルは多産で繁殖力が強い。水生でありながら肺呼吸もして地上を移動するので、根絶は簡単でない」と話す。
 このカエルは、環境省と農林水産省が選ぶ「総合対策外来種」で、規制はないが分布拡大や遺棄の防止対策などが必要とされている。

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