日本アルプス 四季を旅する
夕刻に開けた世界
夏本番のアルプスは天候が急変することが多く、晴れの天気予報でも午後になると雲に覆われ、やがて夕立がやってくることが度々ある。この日もせめて雨が降らなければと願いながら、北アルプス立山連峰に入った。
早朝、富山県側から室堂に向かう。お盆を過ぎたとはいえ、強い日差しを肌にジリジリと感じるが、風はすでに冷たい。室堂一帯に広がる高山植物チングルマの紅い穂が、緑の山肌に良いアクセントとなっている。体感でも視覚でも季節の移り変わりを感じる。
今回はここから立山主峰の雄山に行き、立山の峰々を渡り歩き、宿泊地の剱御前小舎へ向かう行程とした。だんだんと気温が上がるとともに稜線を雲が覆い始め、足を速めるが、午後はやはり雲の中。到着した小屋で暖をとりながら外の様子をうかがう。夕刻には雲が晴れることを願いつつ、霧に巻かれた白い世界のなか、小屋から近い剱御前山を目指した。
狙い通りに夕刻には霧の間から太陽の光が差し込み始め視界が開けだした。岩に巻き付くようなハイマツの幹。アルプスの稜線という厳しい地で必死に生きようとする生命力と、自然の造形美を感じる。
あっという間に太陽は雲海に覆われる富山平野の向こうに沈んでいった。
【撮影地】
富山県立山町 剱御前山
(大島隆義)