日本アルプス 四季を旅する

錦秋の濃ヶ池カール

 

 中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(標高2956㍍)は同山域の北部に位置し、その南東には氷河時代に形成された圏谷湖(けんこくこ)(※注)の濃ケ池(のうがいけ)がある。カール底のモレーン(氷堆石)によって堰き止められた雪解け水が池となり、年中枯れることはない。そこから南西にもカール地形があり、木曽駒ヶ岳という名称の由来の一つでもある「駒(=馬)」の雪形の一部の駒飼ノ池がある。

 それら両方の池から続く大きなU字谷、黒川氷食谷は魅力的な山域だ。観光地として知名度がある千畳敷カールに比べて、こちらは訪れる人も多くなく静かだ。

 濃ケ池周辺は個人的に気に入っている。皆さんにもおススメしたい。もっとも近年は、このあたりの紅葉の色づきがとても綺麗なのがその理由である。

 訪れたときはモレーンとハイマツ帯に点在する紅く色づいたナナカマドや、黄色く色づいたダケカンバの樹々が多く、カール一帯はおそらく紅葉の最盛期。

 カール上部の稜線には名のあるピークはないものの険しそうな岩稜が続き、背景には澄んだ青空に上層雲が流れる。色鮮やかな濃ヶ池カールの山岳風景を切りとることができた。

 

 【撮影地】長野県宮田村 濃ケ池

 ※注 圏谷湖=山岳氷河によって山の頂部や山腹に生じた椀状のくぼ地にできた湖

 (大島隆義)

PAGE TOP