フォーラム「企業とつながる甲斐の森」を都内で開催

フォーラムでは企業が森づくりにかかわる意義や効果について語り合った=2025年2月20日、東京・大手町
山梨県が推進する「企業の森づくり」について意見交換するフォーラム「企業とつながる甲斐の森」(森林文化協会主催、朝日新聞社など後援)が20日、東京・大手町で開かれ、県内で森づくりを進める団体・企業関係者らがそれぞれの取り組みの成果や森林整備の意義などを語り合った。
2007年から森林と企業の橋渡し役を担う「やまなし森づくりコミッション」の島田欣也・シニアアドバイザーは、東京に隣接しながらも豊かな生態系が残る県の魅力に触れ、これまでに更新を含む127件の森林整備協定を企業と結んだ実績について説明した。
甲府市や笛吹市などで「Present Treeの森」を運営する環境リレーションズ研究所の鈴木敦子理事長は、植樹イベントなどを通じて地域住民との交流が生まれ、企業の社会貢献に役立っていると強調した。
県内に50店舗を展開するドラッグストア「クスリのサンロード」の山下光浩専務は、都留文科大の学生と連携した森林整備や小学生対象の体験イベントなどについて紹介し、「企業も次世代に森の大切さを伝える責務を担っている」と話した。
後半のパネリストによる意見交換では、企業が森づくりや、従業員の研修をはじめとした活動に森林を活用することの意義について語り合った。

企業が森づくりにかかわる効果を語るクスリのサンロードの山下さん
山下さんは「森は手入れをすることで、木が二酸化炭素を吸収する光合成を維持していける。老齢の木は伐採し、新しい木を植えて行かなければならない。伐採に従業員が参加することで、国や県に任せるのではなく官民が力を合わせて森を守ることの大切さを実感できている」と語った。

Present Treeの森について紹介する鈴木さん
鈴木さんは、「トップダウンで森に連れてこられたケースも、ボトムアップで従業員が社長を連れてきたケースもあるが、共通するのは、森で活動することで新入社員は自社へのプライオリティや愛着が高まるということだ。新入社員の離職率が下がったことを実感している企業の社長さんもいる」と事例を紹介した。
さらに、日本のような成熟した社会において製品や企業の差別化を図るには、目に見えない要素に着目する必要があると指摘。「若者たち、つまり未来の消費者が求めているのはサステナブルなもの。それを最も表現できるのが森づくりではないかと思っている。生物多様性の保全や脱炭素、地域を守る。森の公益的機能と呼ばれるものには、サステナビリティ―に富んだ機能や対象が含まれている」と話した。

やまなし森づくりコミッションの取り組みを紹介する島田さん
島田さんは「企業の従業員が森林作業を経験すると、その作業の必要性や背景、解決法を探ることで、ソリューション力を高めることにつながる」などと語った。

自身の経験に基づいて語る安藤きらりさん
司会進行を務めた2024ミス日本みどりの大使・安藤きらりさんは1年間の活動で、最初に林業の基礎を教えてもらったのが山梨県だったと振り返ったうえで、「社会人1年目の私は、若い世代に森を訪ねてもらい、木材製品ができるまでの過程をもっと多くの人に知ってもらいたいと思っている」と語った。そのうえで、「就職活動で会社を選ぶ基準にサステナブルな経営を実現できているかどうかも、重要なポイントになっている。学生も環境に興味を持つ人が多いと感じる」と、企業が生物多様性の保全や持続可能性に配慮した活動を行う意義を訴えた。