日本アルプス 四季を旅する
移ろいのとき
10月の中旬、日本アルプスの稜線には冬の便りが届く。早くも雪に閉ざされようとしている頃、晩秋の山容を求め、北アルプスは後立山連峰の南部に位置する爺ヶ岳を目指した。
この山への一般ルートとも言える柏原新道から入山する。
登山口付近は紅葉の盛りで、モミジが真っ赤に色づいていた。ひたすらアップが続く登山道だが、ところどころ展望が開け、そこから見える山の上部には白い樹皮の樹々が広がる。寂しげな風景だ。
ブナ林から標高が上がっていくと、ダケカンバやカラマツなど黄色く色づいた黄葉の世界に変わる。道中の足元には落葉のじゅうたんが広がっていた。
標高2000㍍を超えると、下で眺めていた白い樹々が迫ってきた。落葉しすっかり幹から枝までがあらわになった複雑な枝振りは、何とも言えない造形美を感じさせる。そこに点在するカラマツの鮮やかな黄色が、この寂しげな世界に、秋を惜しむようにアクセントを添えていた。
【撮影地】 長野県大町市
(大島隆義)