日本アルプス 四季を旅する
快晴の銀世界
近年、日本アルプスは冬の到来が遅く降雪量も少ない。自然風景を撮り伝える者の一人として、環境の変化や温暖化を肌で感じることが多い。
今回紹介する山域でも、12月頭のこの時期であれば登山口からアイゼンなどの滑り止めを履いて入山するのが当たり前だったが、訪れたときには雪がない状態だった。以前は稜線に出ればいつでも厳冬期のような一面白銀の世界だったが、近年は気象を読んで入山し、やっとそれらしい情景が広がるといった印象がある。
前日の寒波により、おそらく稜線には真っ白な世界が広がるだろうと期待しつつ、予定を早めて深夜から夜行登山することにした。行程通りいけば山行の半分あたりで尾根の上部に出る。そこではダケカンバ林と北アルプス大天井岳が望める。あわよくば、ダケカンバ林に霧氷が発生し、朝日で紅く染まるところを撮影できたらとイメージしながら足を進めていた。予定通り到着し朝日を迎えることはできたが、ダケカンバ林は霧氷となっておらず、もう少し上部まで登る必要があった。
朝日の撮影をしてしばし休憩をとった後、先へと進むと、新雪が降り積もり、ハイマツ・ダケカンバなどの植物には霧氷ができており、思い描いていた世界が広がっていた。快晴のため、太陽の日差しで刻一刻と霧氷が解けて落ちてゆく。急いで絵になるダケカンバを探し、稜線の先に聳える槍ヶ岳とフレーミングして、シャッターを切った。冬らしい北アルプスの情景をカメラに収めることができた。
【撮影地】
長野県安曇野市 燕岳
(大島隆義)