日本アルプス 四季を旅する
雪壁の造形
厳冬期も折り返しの時期、北アルプスの北部に位置する唐松岳からのびる八方尾根に入山した。
この時期は冬型の気圧配置も落ち着き、日本海側に位置する後立山連峰(唐松岳も含む)は穏やかな晴天に恵まれやすい。12月から本格的に降り続いた雪によりハイマツなどの低木や植物は白く覆われ、八方尾根一帯は真っ白に様相が変わる。点在するダケカンバの大木も夏季よりうんと低く見え、その積雪量の多さが窺えるとともに、樹木の強い生命力を感じる。
八方尾根から望める鹿島槍ヶ岳や五竜岳の東面はどこも壁のような山容をしており、そこには幾筋もの縦縞からさらに派生する縞模様の雪壁、ヒマラヤ襞(ひだ)がつくり出されることがある。数日前まで降り続いた雪は稜線までしっかり綺麗に白い衣を纏わせ、美しい山襞が主稜線・尾根へと現れていた。
画面一杯にフレーミングした急峻な尾根筋とヒマラヤ襞の陰影。雪は冬晴れの空の色を反映し、より美しさを増していた。
【撮影地】
長野県白馬村 八方尾根
(大島隆義)