100人近くの群馬県木育インストラクターが誕生! ~草の根のように木育をひろげて~
群馬県は、これまでに100人近くの「木育インストラクター」が誕生している県であるのをご存じでしょうか。今回は木育に携わる“人づくり”に力を入れる、群馬県の取り組みを紹介します。
県内木育推進の大黒柱『群馬県』
県土の3分の2を森林が占める、関東一の森林県。その森林は、利根川水系の上流を支え、首都圏の水がめとして、水源のかん養や災害の防止など、極めて重要な役目を担っています。群馬県の森林の多くは木材として利用適期を迎え、この森林資源を循環利用していくことが、自立分散型社会の実現に向けた一歩となります。
そこで群馬県は東京おもちゃ美術館を運営する認定NPO法人芸術と遊び創造協会とともに、地域材木製品の消費を増やし、群馬県の森林を育て守る、循環型社会の構築を目指し、2020(令和2)年12月16日、全国で3番目、都道府県としては東日本で初めて『ウッドスタート宣言』を行いました。
これを皮切りに、県内の全市町村が「木育」に取り組めるよう呼びかけを行うとともに、県内外の市町村間の連携を促し、木工分野活性化のため企業同士のマッチングなどを支援しています。さらに県内の建築物の木造化や内装の木質化をはじめ、おもちゃや家具、生活用品など暮らしの中のあらゆる場面で、県産木材のさらなる利用を促進しています。
群馬県内でウッドスタート宣言を行い、誕生祝い品(木製のおもちゃ)を配布している市町村は、上野村、みなかみ町、川場村、沼田市、嬬恋村(2024年7月27 日新加入)の5市町村に広がっています。
こうした自治体・企業・業界団体などへの支援を行うと同時に、群馬県民・在勤者といった“人”に対して推進しているのが「群馬県木育インストラクター養成講座」の取り組みです。
地域の木育推進のリーダーを育てる「群馬県木育インストラクター」
そもそも「木育」、「木育インストラクター」とはどのようなものなのでしょうか。芸術と遊び創造協会は、「木育」とは「木が好きな人を育てる活動」と考えています。そして「木育インストラクター」は、樹木や自然を通して人との関わり思いやりの心などを大切にする木育の伝え手です。
群馬県は、こうした木育を推進するリーダーを育成するため、木育の考え方や必要性、木製品を暮らしの中に取り入れる意義を学ぶ「群馬県木育インストラクター養成講座」を開いています。ウッドスタート宣言の翌21年度から23年度までの3年間に100人近くの「群馬県木育インストラクター」が誕生しました。
この講座では、はじめに群馬県林業振興課の担当者から「群馬県の森林・林業の概要」や「県内のウッドスタートの取り組み方針」を説明します。群馬県林業振興課が主催し講座まで行うのは「木育インストラクター講座をきっかけに少しでも木材や林業のファンを増やしたい!」という思いから。参加者も地元の森林の話から入ることで、群馬の自然をより身近に感じながら学び進めることができます。
体験プログラムでは積み木をやすりで削り、用意した桶に浮かべてみます。ほかの参加者と一緒に遊びながら学ぶことで段々と仲良くなり、横のつながりも広がります。
受講後はインストラクターとして登録されます。東京おもちゃ美術館が行う「木育キャラバン(移動おもちゃ美術館)」などのイベントにスタッフとして参加し、木のおもちゃのレクチャーを受け、イベントに慣れていただくことで、自主的に活動できる力をつけてきている人も増えています。
今年度から群馬県木育インストラクター取得者に向けた「フォローアップ講座」も開催。群馬県林業振興課の担当者は、来年度以降もより実践に近い形式の講座を実施していきたいと意気込みます。
講座を通じて、群馬の森林・林業・木育に興味のある人が増えてきており、イベント時に木材の調達をお願いするなど、講座で仲良くなった方同士で声を掛け合っています。群馬県は、こうした横のつながりが深まることで新しい展開が生まれることを期待しています。そして、イベントだけでなく保育や子供の生活の場などに、木育が少しでも浸透していくよう、身近な、小さな場所から、木育インストラクターの皆さんに活動していただくことを目指しています。
関東一の林業県を目指して。これからも群馬の人々が草の根のように木育に思いを巡らせて活動し、それが強固な地盤となり、木育を支えていくことを願っています。
(芸術と遊び創造協会 立石聡美)