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新エネ大賞に有田川町 県営ダム放流水で小水力発電

 新たなエネルギー導入につながる取り組みを表彰する今年度の「新エネ大賞」(一般財団法人新エネルギー財団主催)に、有田川町が県営ダムの放流水を使ってつくった小水力発電が選ばれた。県内の自治体や企業では初の受賞で、最高賞に次ぐ「資源エネルギー庁長官賞」に輝いた。15日に東京で表彰式があった。
 受賞したのは、県営二川ダム(同町二川)で下流の有田川の流量維持のため流されている「維持放流水」を利用した「町営二川小水力発電所」。町が昨年2月につくった。ダムは1967年に治水と発電の多目的ダムとして県が設置。98年から下流の水質維持のため毎秒0・7トンの水を維持放流水として流し続けている。
 発電所はその取水口と放出口の約30メートルの高低差を利用。水力で発電機を回す。年間発電量は一般家庭約300世帯分に当たる120万キロワット時。町は固定価格買い取り制度で関西電力に売電しており、毎月約400万円の利益を生んでいる。また発電後に放流する水量は変わらないため、下流への影響もない。
 発案者は、町環境衛生課長の中岡浩さん(55)。町教委の係長時代に、放出口から勢いよく放たれる維持放流水を見て、「エネルギーを捨てているようなもの」と発電することを思いついた。流量から発電量を試算し、採算がとれると判断。町長に小水力発電を中心としたエコプロジェクトを提案し、09年4月に新エネルギー推進を担当する特命係長に就任した。
 その後、ダムを管理する県との折衝に乗り出した。ただ、81年に当時の建設省と通商産業省の間で交わされた覚書が障壁になった。覚書では多目的ダムでの負担金割合を定めていたが、これに従えば小水力発電所を設置するためには、県が維持放流するために要した費用の半分を町が負担しなければならなかった。事業費とは別に4億円近い負担金が発生することになり、計画は頓挫しかけた。しかし、粘り強い交渉で、11年3月の東日本大震災による電力不足も転機となり、負担金を大幅に減らすことで県と合意。事業化にこぎ着けた。
 財団も「建設に際して、町の所有でない県営ダムに設置するために粘り強く交渉を続けた。持ち分負担額に関する見直しもあり、有田川モデルが先行事例として全国に広まる可能性もある」と評価した。
 総事業費は約2億8600万円に上ったが、これまで町が資源ごみの分別の徹底によって積み上げてきた基金などを充てた。事業費も7年ほどで回収できるといい、町は今後、環境教育やさらなる再生エネルギーの普及などの原資として還元する計画だ。中岡さんも「小さな町でも工夫すればいい取り組みができると信じてきた。小規模自治体のモデルケースになれればいい」と話している。

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