木育でつながる地域

(新シリーズ)地道な木育活動がつながって大輪の花に 徳島

 木育を推進することで、地域の様々なステークホルダーがつながることができます。新連載「木育でつながる地域」は、地域材の活用のみならず、子育て支援、 関係人口の増加、インクルーシブ社会の実現、地域活性化などなど、さまざまなかたちで、地域が元気になり、持続可能 になっていく様子を、各地から伝えます。

徳島木のおもちゃ美術館の館内=いずれも東京おもちゃ美術館提供

 まずは徳島です。

 2019年2月16日。徳島市内の「あわぎんホール」は熱気に包まれていました。この日行われた「第6回木育サミットin徳島」の会場には、700人を超える人たちが集まり、「木育」をキーワードに、熱い議論を戦わせました。

 その木育サミットのオープニングでは、徳島県知事が「ウッドスタート」を高らかに宣言し、木育を推進していくことを県民に向けてアピールしました。さらにクロージングでは「とくしま木育共同宣言」が、多くの方々の賛同を得て、採択されました。

徳島県のウッドスタート宣言

西日本初の開催となった第6回木育サミット

 

 この木育サミットが、これほどまでに多くの方々から関心を集めたのはどうしてでしょうか。そのきっかけは、さらに6年前にさかのぼります。

 2013年、徳島県で全国初の画期的な条例が施行されました。「徳島県県産材利用促進条例」です。第15条3には、「県は、木育(県民の生活に必要な物資としての木の良さ及びその利用の意義を学ぶ活動をいう。)の推進に努めるものとする」とうたわれています。

 その後、これを根拠に様々な木育推進のための事業が、徳島県内で行われるようになります。例えば「とくしま木育推進計画」の策定、「木育円卓会議」の開催、県内20カ所への「とくしますぎの子木育広場」の設置などです。

 市町村レベルでも2017年、徳島県内初となるウッドスタート宣言を行ったのが、伝統ある徳島林業の中心地・那賀町。さらに県西部にある三好市も、2019年に宣言を行いました。そしてそれぞれ地域にちなんだ地産地消の誕生祝い品が、その土地で生まれた赤ちゃんにプレゼントされることになります。那賀町では「ゆずつみき」を、三好市では「こだま~かずら~」を贈っています。

那賀町の誕生祝い品「ゆずつみき」

三好市の誕生祝い品「こだま~かずら~」

 

 この両自治体では、独自の木育事業が展開されています。ここでは三好市の取り組みを紹介します(那賀町の取り組みについては『デジタル版グリーン・パワー』「木育とおもちゃ美術館」の2023年10月配信 「山あいの町でおもちゃ美術館はどのようにして生まれたのか?那賀町山のおもちゃ美術館①」参照)。https://www.shinrinbunka.com/wgp/mokuiku/26802.html

 ソーシャルディスタンスが唱えられ、「つながる」ことが困難になったコロナ禍。三好市でもかねてより計画されていた「木育キャラバン」が、「密」になることを理由に中止されました。代わりに何かできないか。担当者とおもちゃ美術館との間で、何度も議論を重ねました。

 その結果、市内保育園、幼稚園、こども園、児童発達支援施設などに、「おもちゃセット」を巡回させる案が浮上。園ごとであれば、毎日一緒の部屋で過ごしているので、おもちゃで一緒に遊んでも新たな感染のリスクは心配ありません。あとはおもちゃをどう移動させるか。ここで立ち上がったのが、「シルバー人材センター」の皆さん。しかも初年度はおもちゃを持っていくだけでしたが、「それじゃあ、つまらん」ということで翌年、「木育インストラクター養成講座」を受講し、運んだ先の園で、木育の意義を伝え、木のおもちゃの遊び方を伝えるなどして、園児たちと一緒に遊ぶという活動に展開することになります。まさに木のおもちゃを通して多世代がつながったのです。

三好市の巡回おもちゃセットで多世代がつながる

 さて、冒頭に紹介した木育サミットも、新たなつながりを生み出すことになります。徳島県は、木育キャラバンの開催、木育インストラクター養成講座の開催、県主催の木育サミットの開催など、木育サミットの盛り上がりを受けて、立て続けに木育活動を展開しました。そして迎えた2021年10月24日、全国6番目のおもちゃ美術館として「徳島木のおもちゃ美術館」がオープンしました。県立の施設としては国内初となります。今では、年間10万人以上が訪れる全国でも有数の木育施設となっています。

 

(徳島木のおもちゃ美術館については「木育とおもちゃ美術館」の2023年1月~3月配信 「徳島木のおもちゃ美術館①~③」参照)。https://www.shinrinbunka.com/wgp/mokuiku/23821.html

徳島木のおもちゃ美術館の館内の様子

 2013年にスタートした徳島の木育。県内各地への広がりとともに、持続した活動の積み重ねによって、「徳島木のおもちゃ美術館」という大輪が咲いたのです。

 

 (東京おもちゃ美術館副館長 馬場清)

 

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