亜熱帯やんばるの森
フタオチョウとアカメガシワ
やんばるの森は、例年6月末に梅雨明けを迎える。直後の7月は森に潤いが保たれ、昆虫にとってベストシーズン。昆虫は気温が高すぎても行動が抑制され、活動に潤沢な水分も必要になる。
フタオチョウもこの時期、活動の最盛期を迎える。3月の第1化成虫に始まり、そして9、10月の第3化まで年3回の出現ピークが知られている。
雄は見晴らしのよい枝先にとまり、占有行動をとる。そこに接近するものに対し、急発進して追いかける。ときには鳥を追いかけることさえある。太い胴体には強力な飛翔(ひしょう)筋が内包されているのだろう、チョウとは思えないダイナミックな飛翔を見せる。
フタオチョウの和名は「2対の尾」を意味する。後翅にある尾状突起は通常1対だが、なぜか2対備えている。近くにある偽の目玉模様(眼状紋)とセットで偽の頭部を形成し、捕食者に移動方向を錯覚させることで生存率を上げているのだろう。
花で吸蜜することはまれで、樹液、熟果、動物の死骸などから吸汁する。特に、アカメガシワの樹液でよく目撃される。
(湊和雄)
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