亜熱帯やんばるの森

ベニモンアゲハとリュウキュウウマノスズクサ

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ベニモンアゲハ。前翅長(ぜんしちょう)40から55ミリ。現在では奄美諸島まで生息域を広げている

 

 やんばるの森に分布する生物は、古くから土着している種とは限らない。とくに地球規模の気候変動が指摘される昨今、近年に定着した種も少なくない。

 このベニモンアゲハもその1種。1960年代終盤から八重山諸島に、90年代終盤から沖縄諸島にも定着し始めた。

 鮮やかな紅色が目を引くが、これには大きな理由がある。幼虫はウマノスズクサ類を餌(えさ)にして、その中に含まれる毒物質を体内に蓄え、鳥類などの天敵による捕食を免れている、と言われる。その有毒であることをアピールするための鮮やかな色「警告色」なのだ。

 無毒のシロオビアゲハの一部の雌は、このベニモンアゲハに擬態している(月刊『グリーン・パワー』20年5月号掲載)。そしてこの擬態したタイプの雌の出現率は、ベニモンアゲハの生息密度に比例して増えるという研究がある。つまりベニモンアゲハの定着は、在来種にも影響を与えているのだ。

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リュウキュウウマノスズクサは12〜3月に開花する。つる性植物。沖縄から奄美諸島に分布

 

 ベニモンアゲハの食草に複数のウマノスズクサ類が知られているが、リュウキュウウマノスズクサはその代表種。一見、食中植物を思わせるような不思議な形をした花。これは花の中に昆虫を誘い込んで、受粉率を高めるためのものと考えられている。

 (湊和雄)

動画でもご覧ください。

 

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