亜熱帯やんばるの森

オキナワトラフハナムグリとイタジイ

202203m

オキナワトラフハナムグリの雌(左)と雄。体長10〜14ミリ。沖縄本島北部と久米島に分布。褐色部分が黒色になる変異型も出現する

 やんばるの森の新緑は、早くも3月に始まる。亜熱帯とは言え、冬季の昆虫の活動は低調である。そして春を迎え、一斉に活動を始める昆虫で、目につくのが甲虫のグループ。その中で、体長1センチ強というサイズながら存在感を放っているのが、このオキナワトラフハナムグリだ。遭遇するほとんどが触角の大きな雄。小ぶりな触角の雌は、20〜30頭に1頭の割合でしかない。しかし、この偏った性比は林床近くで見られる集団に限られたもののようだ。地上10〜25メートルに咲くイタジイなどの花に集まる昆虫を採集すると、かなりの数の雌も含まれていると言う。

 地中の蛹(さなぎ)から羽化した成虫の雄は林床の下草にとどまり、雌は高所に咲く花に移動するのであろうか。その後、雌雄の出会いは雌のフェロモンに誘引されるのだとしたら、雄の触角だけが大きく発達していることと矛盾はない。いずれ、この謎が解き明かされる日も来るだろう。

 やんばるの森を構成する樹種で、最も多いのがイタジイ。温帯のスダジイと同種とする説と別亜種、別種とする説がある。

202203s

やんばるの森の優占樹種イタジイの花。3〜4月に開花し、多くの昆虫が集まる。樹高10〜25メートル。琉球列島に分布。別名オキナワジイ

 

(湊和雄)

 

PAGE TOP