亜熱帯やんばるの森

ヤンバルクイナとクワズイモ

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夜間に樹上で休むヤンバルクイナのペア。やんばるの固有種。全長約35センチ。国指定天然記念物

 

1981年に新種として発表されたヤンバルクイナ。それから40年余りが経過したが、まだまだ謎に包まれたことも多い。そのひとつ、飛べない代わりに発達した脚で、夜間は樹上に登って休む。しかし、林道沿いで観察されるその姿は、低温期には減少する。この行動自体が減るのか、体温維持のために森の中に移動するのか、あるいは低い枝に登るために目立たなくなるのかは分からない。

遭遇する頻度は減るものの、低温期はピッタリと体を接した状態の“ペア”が、他の季節よりも多いような印象も受ける。やはり体温維持のためなのだろうか。掲載した写真も最も寒い季節に、渓流沿いの枯れ木に登っていたペアだ。

 

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クワズイモの熟した実。1枚の葉は60センチ前後にもなり、草丈は人間の身長を上回ることも。沖縄から九州南部、四国南部に分布

 

ヤンバルクイナを観察していると、カタツムリ、ミミズ、昆虫などを捕食するシーンに度々遭遇する。このことから肉食のイメージが強いのだが、消化管の内容物の分析からは、意外なことに果実や種子も多く見つかる。そのひとつがクワズイモの実。シュウ酸カルシウムを多く含むことから食用には適さず、人間は「食わず芋」と命名しているが、ヤンバルクイナには関係ないようだ。

(湊和雄)

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