木育でつながる地域

民・民・官連携で地域を盛り上げる しまなみ木のおもちゃ美術館(前編)

 四国4県のうち、唯一おもちゃ美術館がなかった愛媛県。その今治市に今年3月、「しまなみ木のおもちゃ美術館」がグランドオープンしました。全国15館目の姉妹館となる同館ですが、これまでの施設にはなかった設立・運営形態を取っていることが大きな特徴のひとつです。前後編の2回にわたり、同館のレポートをお届けします。前編は、設立にいたる経緯や地域連携の仕組みについて紹介します。

写真①しまなみ木のおもちゃ美術館館内

 全国のおもちゃ美術館の設立・運営形態には、自治体が設立して運営を民間に委託する「公設民営」や、民間が設立・運営を担う「民設民営」があります。
 従来の民設民営館では、設立主体と運営主体が同一であるのが一般的でした。「おもちゃ美術館をつくりたい」と考えた民間企業や団体が自ら資金を出して設立し、そのまま運営も行う形がほとんどです。それに対して「しまなみ木のおもちゃ美術館」は、民設民営でありながら、設立主体と運営主体が異なるという珍しい形を取っています。さらには、今治市が側面から運営支援を行うという「民・民・官」の連携を実現しました。なぜ、このような形となったのでしょうか。

 始まりは、今治市内の里山エリアに位置するイオンモール今治新都市の想いでした。 単なる商業施設の出店にとどまらず、地域に根差し、ともに発展することを大切にする同モールは、里山エリア全体を活性化させる施策を模索していました。
 そのなかで担当者が出会ったのが「福岡おもちゃ美術館」です。子育て支援や多世代交流といったコミュニティー創出に関わるコンセプトに深く共鳴。さらに、イオングループが長年注力してきた脱炭素やネイチャーポジティブ、植樹活動といった取り組みと、地域材を活用して木育を推進するおもちゃ美術館の理念が見事に合致し、ぜひこれを今治で実現したいと、イオンモール今治新都市内でのおもちゃ美術館設立を目指して動き始めたのです。

 自ら資金を出して設立主体になる――。これまでのビジネスモデルにない挑戦を決めたイオンモール今治新都市が、運営主体として白羽の矢を立てたのが株式会社今治・夢スポーツ(FC今治)でした。
 同じ里山エリアで、同モールの隣に自前のサッカースタジアムを構えるFC今治。スタジアム周辺に365日の賑わいを創出するため、様々な企業・団体と連携しながらコミュニティー事業を展開しています。
 また、教育・次世代育成事業の実績も豊富です。今治市から自然豊かな公園「しまなみアースランド」の運営管理を請け負い、全世代向けの環境教育プログラムを開催。さらに、自然の懐で「遺伝子にスイッチを入れる」体験を提供する「しまなみ野外学校」も実施しています。
 そのFC今治が、おもちゃ美術館の持つ多面的な価値、特に「多世代コミュニティー」や「木育」といった側面に、自社事業との強い親和性を見出しました。そして「しまなみ木のおもちゃ美術館」の運営を担うことを決めたのでした。

写真②イオンモール今治新都市内にオープンしたしまなみ木のおもちゃ美術館外観

 こうして民設民営の仕組みが整った「しまなみ木のおもちゃ美術館」ですが、地域に広く愛される存在となるために欠かせないピースがありました。それが、自治体からの応援です。
 おもちゃ美術館設立事業が立ち上がった段階で、今治市は「ウッドスタート宣言」を表明。地域産材で作った木のおもちゃを誕生祝い品として配布することに加え、木育キャラバンや木育タウンミーティングを開催するなど、市を挙げた木育推進の大きなうねりをつくってきました。その理想的な流れのなかで、今回の「しまなみ木のおもちゃ美術館」の開設が位置づけられたのです。
 さらに、市の広報誌やテレビ・ラジオ番組、各種SNSなど、今治市が持つ市民へのタッチポイントをフルに活かした広報バックアップは、認知度向上の強力な追い風となりました。民間の熱意と、行政の確かな後押し――。「今治の里山エリアを盛り上げたい」という三者の共通した想いが、ここに「しまなみ木のおもちゃ美術館」として見事に結実したのです。

写真③しまなみ木のおもちゃ美術館グランドオープンセレモニーでのテープカット

 後編では、このような経緯を経て誕生した「しまなみ木のおもちゃ美術館」の魅力をたっぷりと紹介します。
 (芸術と遊び創造協会地域デザイン部 青井絵美)

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