木育でつながる地域

ソウルの子どもたちも夢中!ソウルにオープンしたPOP UP

 前回このレポートで詳しく報告した2024年9月、韓国・釜山での木育キャラバン。コネクト現代(旧・現代百貨店釜山店)で開かれたこのイベントは、約2週間にわたり7,000人もの来場者を迎え、親子の笑顔に包まれながら幕を閉じました。韓国で初めて本格的に展開されたこのイベントは、子どもたちに木のおもちゃの魅力を伝えるだけでなく、親子が一緒に遊び、学び、楽しむという新しい文化を体験する場となりました。その成功を受け、次なる舞台はソウル。現代百貨店・千戸店での開催が決定し、私たちの挑戦は続いていきました。

 釜山での成功直後、現代百貨店の担当者と私たちは、次回開催に向けた議論を重ねました。日本側では大型遊具やおもちゃの準備、スタッフ教育を進め、韓国側では会場の改装や運営オペレーションの決定、そして安全検査を進めました。韓国では子どもの遊び場に対して非常に細かい検査が義務付けられており、そのため当初予定していた夏のオープンは延期され、最終的に9月26日が正式なオープン日となりました。

地下鉄千戸駅に張り出されたTOKYO TOY MUSEUM POP-UPの広告=2025年9月15日 倉満 夕紀撮影

 オープンまでの間、現場運営を担う韓国の会社の方々が福岡おもちゃ美術館を視察に訪れました。館内を案内すると、写真や映像で見ていた以上に魅力的だと感じてくれたようで、特におもちゃ学芸員(ボランティアスタッフ)の親切さとフレンドリーさに驚いていました。しかし同時に、日本と韓国の文化の違いに不安を抱いている様子もありました。韓国では「キッズカフェ」が一般的で、子どもが遊んでいる間に親は休憩スペースでスマートフォンを見て過ごすことが多く、「親子で楽しむ」というコンセプトが果たして韓国でも受け入れられるのか、心配していたのです。

 さらに、釜山での開催時には日本人スタッフが現地スタッフと共に運営に携わっていましたが、今回は韓国のスタッフのみでの開催となります。そのため、視察や事前研修を通じて「親子で楽しむ」文化をどのように根付かせるかが、より重要な課題となっていました。

福岡おもちゃ美術館でおもちゃ学芸員と来館者の親子が遊んでいる様子=2025年7月5日 鬼木乙帆撮影

 私は、福岡おもちゃ美術館にも韓国から多くのお客様が訪れていること、そして彼らも日本人の親子と同じように一緒に遊び、言葉が通じなくてもおもちゃ学芸員と楽しくコミュニケーションを取っていることを伝えました。大切なのは「雰囲気づくり」。親子で遊ぶ空気をつくり出せば、自然と同じように楽しんでくれるはずだと説明しました。運営会社の方々は翌日も視察に訪れ、ワークショップや親子のやり取り、スタッフの動きを熱心に観察していました。この経験が後のスタッフ教育に大きく活かされていることを、ソウルでの開催時に強く実感しました。

 いよいよ韓国での開催に向けて渡航した私たち。会場に到着してすぐ目に飛び込んできたのは、床に描かれた大きな「川」でした。これはソウルを象徴する「漢江」であり、現代百貨店・千戸店の近くを流れる韓国で最も有名な川のひとつです。日本のおもちゃ美術館が地域の特色を内装に取り入れていることに着想を得て、韓国側も地域性を反映させたデザインを採用しました。地域の風景を館内に取り込むことで、訪れる親子にとって「自分たちの街の遊び場」という親しみを感じてもらえるよう工夫されていたのです。

中央に漢江が描かれた床=2025年9月16日 倉満撮影

 この日は百貨店の休館日を利用して大型遊具の設置を行いました。冷房が効いていない暑い会場で汗を流しながら、現地スタッフと協力して作業を進めました。覚えた韓国語を使いながら「暑いですが大丈夫ですか?」と声をかけ合い、おもちゃは実際に遊び方を教えながらセッティングしました。けん玉を気に入ったスタッフが多く、オープン前には日本のスタッフと同じくらいの実力をつけていて、とても頼もしく感じました。この共同作業を通じて距離が縮まっていくのを実感しました。

赤ちゃんスペース(写真左)と魚釣りスペース(写真右)をつくる現地のスタッフ=2025年9月15日 倉満撮影

 その後、現地スタッフに対しておもちゃひとつひとつの説明、扱い方や親子への効果的な声のかけ方、さらにおもちゃを通じて会話のきっかけを生み出す方法などを丁寧にレクチャーしました。スタッフたちは非常に熱心に耳を傾け、次々と質問を投げかけてくる姿が印象的でした。学ぼうとする意欲が強く、私たちの思いを真剣に受け止めてくれていることが伝わってきました。

けん玉のレクチャーを受ける韓国のスタッフ=2025年12月16日 倉満撮影

 本格的なオープンに先立ち、関係者向けのプレオープンが行われました。緊張の面持ちで迎えたスタッフたちでしたが、来場者が入ってくるとすぐに笑顔で出迎え、おもちゃを手に取りながら子どもたちの興味を巧みに引き出していました。その姿を目にした瞬間、これまでの準備が確実に実を結んでいることを実感し、安心すると同時に胸が熱くなるほど感動しました。

 現在もソウルでの営業は続いています。スタッフたちはより良い施設にするため、お客様からの意見やスタッフ自身の考えを取り入れながら日々の運営を行っていることを定期Web会議で報告してくれ、とても心強く感じています。

 会場では、木のおもちゃの魅力に心を奪われる親子が多く見られました。来場者からは「子どもが遊んだ木のおもちゃを購入できるか」といった問い合わせも数多く寄せられています。やはり木の良さは、実際に手に取り、触れてこそ実感できるものだと改めて感じました。今回のPOP・UPをきっかけに、韓国でも「木育(MOKUIKU)」という言葉が広がり、木に興味をもつ方、木を大事にする方が増えることを願っています。

日本・韓国両方で人気のあるおもちゃ「どんぐりころころ」&「どんぐりきのこ」。坂をトコトコ下りる光景が可愛らしく大人も癒やされる=2024年9月5日 倉満撮影

 釜山からソウルへと続いた木育キャラバンは、単なるイベントではなく、文化交流の場でもありました。日本と韓国の違いを乗り越え、親子で楽しむというコンセプトを共有できたことは大きな成果です。木のおもちゃを通じて、国境を超えて人々が笑顔でつながる。その姿を目の当たりにし、木育キャラバンの可能性を改めて感じました。おもちゃ美術館はこれからも様々な土地で挑戦を続け、皆様に「遊びの喜び」を届けていきたいと思います。

 (福岡おもちゃ美術館倉満夕紀)

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