木育でつながる地域

韓国で木育キャラバン!海外で広がる木のおもちゃの魅力

現代百貨店 千戸店にオープンしたTOKYO TOY MUSEUM POP-UP 撮影者:倉満夕紀

 2025年9月26日、韓国・ソウルの現代百貨店・千戸店に、「TOKYO TOY MUSEUM SEOUL POP-UP」がオープンしました。これは、現代百貨店と東京おもちゃ美術館がコラボレーションした、約1年間にわたるロングランの木育キャラバン(移動おもちゃ美術館)です。すでに韓国のSNSでは話題沸騰中で、週末は常にほぼ満員とのこと。

 実は、韓国での木育キャラバンは今回が初めてではありません。昨年9月に釜山のコネクト現代(旧・現代百貨店 釜山店)にて、約2週間の木育キャラバンを開催しました。

 なぜ「韓国」で、日本の木のおもちゃの普及をめざす、「木育キャラバン」なのでしょうか?今回は、2回にわたって韓国で実施された木育キャラバンについてご紹介しつつ、その疑問について考えたいと思います。

日本のおもちゃ美術館でも大人気の木のたまごプール 撮影者:倉満夕紀

 韓国での開催のきっかけは、現代百貨店の担当者からおもちゃ美術館に届いた1通のメールでした。そこには、福岡おもちゃ美術館を訪れた際に空間や木のおもちゃに深く感動をしたこと、そして韓国の親子にも同じような体験を届けたいという熱い想いが、長文で綴られていました。韓国では現在、深刻な少子化問題を抱えており、子育て世代を木のおもちゃで支援したいという願いも込められていました。

 その後、担当者の方に日本へお越しいただき、当法人の理念やおもちゃ美術館の取り組みについて改めて説明したうえで、釜山のコネクト現代のリニューアルオープンに合わせて、約2週間の木育キャラバンを実施することが決定しました。

 とはいえ、開催までの道のりは決して平坦ではありませんでした。言葉の壁や大量のおもちゃの輸送手続きなど、海外開催には多くの課題がありました。それでも双方が根気強くやりとりを重ね、私たちが韓国の子どもたちのために厳選した木のおもちゃは無事に釜山へ到着。スタッフも現地入りし、設営を行いました。

釜山の木育キャラバンにて韓国のスタッフの方へレクチャーをする様子 撮影者:倉満夕紀

 釜山での木育キャラバンでは、開催期間中、日本人スタッフが韓国人スタッフと一緒に木育キャラバンのトレードマークとなるエプロンを着けて活動しました。現地スタッフには、おもちゃの使い方や子どもへの目配り・声かけのポイントを丁寧にレクチャー。来場した子どもたちにはけん玉を教えたり、工作を一緒に楽しんだりと、国境を超えた温かな交流が生まれました。

 来場した子どもたちは木のおもちゃに夢中でした。あちこちで「これ、全部木でできているの?不思議だね」とお母さんに話しかける子どもたちの姿が見られました。お母さんにお話を伺うと、韓国には「キッズカフェ」と呼ばれる子どもの遊び場はあるものの、使われているおもちゃや遊具の多くはプラスチック製で、木のおもちゃに触れる機会はほとんどないとのこと。また、「木育」という言葉も、韓国ではあまり知られていないそうです。

韓国のスタッフが子どもと一緒に遊ぶ様子 撮影者:倉満夕紀

 私たちが「小さい頃から木に親しんで育ってほしいという思いで、木のおもちゃの魅力を伝えています」とお伝えすると、「木のおもちゃだけで、うちの子がこんなに夢中になって遊ぶなんて知らなかった」「こんなにたくさんの木のおもちゃがあるなんて驚きました」と、素直で温かい感想をいただきました。

 今回は、木の風車づくりワークショップも開催しました。ヒノキ、スギ、センダンの薄い木材を切ったり折ったりしながら、手触りや香りを確かめつつ、子どもたちは集中して作品づくりに取り組んでいました。その姿はとても印象的でした。

 ワークショップを担当した日本のスタッフは、子どもたちに大人気!帰国時の空港でも「바람개비선생님!(風車の先生!)」と声をかけられるほど、心に残る交流が生まれていました。

木の風車を作って大満足な韓国の子ども達 撮影者:詰坂潤

 釜山での木育キャラバンは大盛況のうちに終了し、SNSには「とても楽しかった」「木のおもちゃで遊ばせる貴重な体験だった」といった嬉しいコメントが多数寄せられました。この来場者の声が、今回のソウルでの開催へとつながったのだと思います。

カプラという積み木で作ったナイアガラの滝という作品。端から1本抜くと流れるようにダイナミックに崩れて音も綺麗。撮影者:倉満夕紀

 少し前に、韓国で日本のヒノキが大ブームになったことがありました。それは韓国において集合住宅の普及に伴い、新建材が原因のアレルギーが増えたことがきっかけでした。「日本のヒノキは健康にいい」というヒノキの効果が広まり、内装材として日本のヒノキ人気に火がつきました。これがブームで終わることなく、韓国においても木の持つ効果について、しっかりと理解が深まることが求められています。そのためにも、1年間にわたるこの「ロングラン木育キャラバン」が、「木のおもちゃ」を入り口として、これまで以上に韓国の皆さんに、木材利用の意義を知ってもらい、森や地球環境にまで思いを馳せるようになる、そんな機会になることを期待したいと思います。

 (福岡おもちゃ美術館 倉満夕紀)

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