木育とおもちゃ美術館

由緒ある「木曽」の魅力を伝える  木曽おもちゃ美術館①

01

木曽おもちゃ美術館の「おもちゃのやかた」=東京おもちゃ美術館提供

 今から約9カ月前、雄大なる自然に囲まれ、「木曽路」に代表される豊富な文化を誇る長野県木曽町に「木曽おもちゃ美術館」が開館しました。2回にわたり、この美術館の魅力をお伝えします。

 長野県木曽町は、「木曽五木」(きそごぼく=ヒノキ、サワラ、アスナロ、ネズコ、コウヤマキ)に代表されるように、豊かな森林資源を誇る地域です。この自然の魅力をより多くの方々に知っていただくべく、木曽町は東京おもちゃ美術館とともに2016年に「ウッドスタート宣言」を行い、町でうまれた赤ちゃんに、地域材を活用した木のおもちゃを配布する「誕生祝い品事業」を実施するなど、「木育」に町の政策の一環として取り組んでいます。

 おもちゃ美術館は、その理念を更に多くの方々に、よりダイナミックに伝えるべく「体験型の空間」として整備されたものです。今では町内の方々はもちろん、近隣の塩尻市や伊那市、広くは長野市や名古屋市まで、更にはインバウンドのお客様など多くの観光客に恵まれ、連日にぎやかな館内となっています。

 

美しい旧校舎を活用した美術館

02

現在は「たいけんのやかた」として活用されている旧黒川小学校の校舎=同

 

 木曽おもちゃ美術館は旧校舎、旧体育館、管理棟の3館をリノベーションした施設であり、その中でも最も目をひくのが、美しい木造校舎を活用した「たいけんのやかた」と呼ばれる施設です。この建物はもともと「旧黒川小学校」として、活用されていた校舎です。1928年(昭和3年)に、地元の方々の木材提供や建設協力により建てられたもので、築年数95年もの歴史を誇ります。97年に閉校となった後、2002年から体験交流施設「ふるさと体験館きそふくしま」として活用されてきました。

 ふるさと体験館では、地域の方々に支えられながら、郷土食・木工・農体験など、地域の魅力を発信する事業を展開しています。観光客に地域の文化・魅力を知ってもらうのはもちろん、地域で生まれた子どもたちに、木曽町の魅力を伝え、「地元愛の醸造」を続けてきました。

 このような地域の魅力を発信する機能を、おもちゃ美術館となった現在も、レガシーとして引き継ぎ、「木育」と肩を並べる大切なコンセプトとして「ふるさと体験」を掲げています。

 

美しさを追求した、内装木質化空間

03

人気コーナーの「こども木曽路」=同

 美術館のハイライトは、旧体育館を活用した「おもちゃのやかた」。元々体育館だった施設を大幅にリノベーションしました。町の当初予定では、取り壊しの話もありましたが「これだけの風合いを残す体育館を壊すのはもったいない」、「壊すのは簡単だけど作るのは大変(ある意味SDGsにも表される「利活用の精神」)」という意向により、十分な耐震調査、工事を経て、現在の姿に至りました。

 館内各所に木曽地域の魅力を伝える、オリジナルおもちゃを配置しており、中でもハイライトの一つである「こども木曽路」は、長野県内のおもちゃ作家さんの作品を中心に展示し、11カ所に分かれた小屋・ひろばを展開しています。11カ所は中山道の全行程約540㌔にあった宿場町69カ所のうち、木曽路にある宿場の数にちなんだものです。

 この連載でたびたび触れていますが、「各地域の文化を伝える」という理念は、姉妹おもちゃ美術館の大切な役割です。木曽おもちゃ美術館で遊んだ家族が、少しでも木曽の文化に気づき、地域を愛する心が芽生えてくれることが、私たちの願いです。

 (東京おもちゃ美術館 星野太郎)

PAGE TOP