木育とおもちゃ美術館

全国に広がるおもちゃ美術館と木育 花巻おもちゃ美術館②

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国際色豊かな情景が戻りつつある=写真はいずれも東京おもちゃ美術館提供

 今年3月にマスクの着用は個人の判断が基本になってから、徐々に美術館にも活気が戻っているのかなと思います。現に全国のおもちゃ美術館の入館者数を見ても、前年と比べて、多いところでは月間の入館者数が2倍になっており、また一時期は完全に途絶えていたインバウンド需要も、確実に戻ってきているように思います。

 そのような流れは花巻おもちゃ美術館も例外ではなく、今年のゴールデンウィークには、過去最高の入館者数を記録するなど、好調な日々が戻っています。

 この「好調」は、もちろん前述のコロナ禍からの回復が大きいが、一方でこれまで同美術館が進めてきた活動が、徐々に花開き始めていることの表れでもあるのではないかと考えます。

 今回は、全国の姉妹おもちゃ美術館と比べても「花巻オンリー」な活動を紹介します。

 

 

 民間同士のつながり

 同美術館は「民間主導」だからこそできる独自の木育推進活動を展開しています。その一つが、2018年にトヨタカローラ南岩手、東京おもちゃ美術館との三者で締結した「木育推進連携協定」によるものです。

 この協定の具体的な成果として、花巻おもちゃ美術館の運営団体である小友木材店が、トヨタカローラ南岩手の店舗の中に、「木育ひろば(キッズスペース)」を整備しました。木育という共通理念のもと、同美術館側にはより幅広い広報のため、トヨタカローラ側にはお客さまへのホスピタリティー向上のためという利の一致もあり、どちらにとっても有意義な事業展開になったのではないかと思います。

 更にこの実績がまた、同美術館にとっては広報となり、現在に至るまで、市内のさまざまなキッズスペースの内装木質化を受託することになり、また岩手県千貫石森林公園内にある「もりの学び舎」に関しては、木育広場の増設を請け負っただけではなく、指定管理者として運営にも関わるようになりました。

 このように、同美術館の設立がある意味「ショールーム」の役割となり、さまざまな木育推進活動につながっている点は、同美術館の特徴と言えるのではないかと思います。

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トヨタカローラ南岩手北上店の木育ひろば

 

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岩手県千貫石森林公園内にある「もりの学び舎」

 

 地域を巻き込む「木育」

 前回も触れた通り、おもちゃ美術館の「木育」の目指すところは、一言で言えば「木のファンになってもらう」ことです。美しく内装木質化した空間を作り、木のおもちゃで遊んでもらう。それはおもちゃ美術館らしいアプローチだと思います。

 その理念に軸足を置きつつ、地域の企業・団体などと連携することによって、更に広範囲な方々に木育を知っていただける機会につながっていくと思います。そしてそのことは、少しずつであるかもしれませんが、幅広い地域活性化(連携した集客による経済的メリット)につながっていくのではないかと考えています。

 (東京おもちゃ美術館 星野太郎)

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