木育とおもちゃ美術館

全国に広がるおもちゃ美術館と木育 やんばる森のおもちゃ美術館②

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沖縄県産の木工製品が展示された沖縄木育サミットの会場(上)。その一角で子どもが木工おもちゃで遊ぶ様子=写真はいずれも東京おもちゃ美術館提供

 

 2023年1月15日、那覇市の琉球新報ホールで開かれた「沖縄木育サミット」は250人を超える参加者が集まり、“沖縄ならではの木育”の機運を高めることができました。東京おもちゃ美術館、やんばる森のおもちゃ美術館などを運営する、わたしたち「NPO法人 芸術と遊び創造協会」が主催。沖縄県と国頭村による共催で、沖縄県私立保育園連盟にもご協力いただき、林野庁の補助事業として企画しました。

 基調講演は、琉球大学名誉教授の高良倉吉先生に「琉球王国の木育政策と首里城の復元」と題してお話ししていただきました。2019年に焼失した首里城の復元で県産木材のオキナワウラジロガシが活用されたことなどから、木育をみぢかに感じてもらいやすいと考えました。

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高良倉吉先生による基調講演

 

 県産木材の活用は、平成の首里城復元の際には難しかったものの、令和の復元では実現できました。地元には17世紀半ばの琉球王国の時代から、林政について「森林保護」「林業振興」を両輪として考えてきた歴史があります。こうした思いをどのように未来につなげていくのか、サミット開催がいい機会となりました。

 沖縄といえば、美しい海を想像する方も多いですが、地元には「ヤマヌハギレー、ウミンハギーン」という言葉があります。これは「山が枯渇すると、海も枯渇する。両方はつながっているので、どちらも大切にしなければいけない」という意味。山や森、そこで生きる樹木に触れ、大切にする心を育むという木育の意義を、サミット参加者が琉球の歴史を通じて問い直す時間を共有しました。

2年後に増築 沖縄の民家もイメージ

 やんばる森のおもちゃ美術館は25年春に増築する計画で、木育推進施設としてさらに存在感を高めていきます。

 2年後に生まれ変わる施設のテラス部分には、琉球石灰岩を使って沖縄特有の民家のひさし、アマハジ(雨端)空間をイメージ。遊具やおもちゃには、やんばるの自然と文化を伝えていく要素をさらに盛り込みます。希少生物のすむ池や滝、海、森などを木工細工で表現し、触れて楽しめる空間にしたいと思っています。

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県産木材をふんだんに使った増築後のイメージ

 

 やんばるの植物と遊びをテーマとした「草編み・草玩具エリア」、地元の食文化を遊びで楽しむ「収穫ごっこエリア」、暮らしや風景を楽しむ「里エリア」などができる予定です。

 子どもから、おじい、おばあまでが楽しめる地域に根差した場所にするとともに、国内外の多くの観光客がやんばるの自然・文化に触れられる拠点。琉球王国時代の森林保護と林業振興の政策を受け継ぎながら、持続可能な観光と木育のコラボレーションをめざします。

 (東京おもちゃ美術館 高野祥代)

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