木育とおもちゃ美術館

全国に広がるおもちゃ美術館と木育 やんばる森のおもちゃ美術館①

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希少な動物が多く生息している「やんばるの森」=写真はいずれも東京おもちゃ美術館提供

 

世界自然遺産の森が拠点 文化伝承プログラムも

 全国のおもちゃ美術館の中で最南端にあるのが、「やんばる森のおもちゃ美術館」です。那覇空港から車で約2時間、沖縄本島最北端の国頭村にあります。国頭村は人口約4500人、森林が面積の80%を占める村。国頭村(くにがみそん)を含む北部エリアは、通称「やんばる(山原)」と呼ばれ、ヤンバルクイナやヤンバルテナガコガネといった、ここでしか見られない固有種が多く生息しています。2021年にはユネスコ世界自然遺産に登録されました。

 世界自然遺産の玄関口となる国頭村森林公園の中におもちゃ美術館はあります。交流促進センターとして使われていた建物を全面改装。ワンフロアの館内には、「やんばるの森」の60%にあたるイタジイが床に敷かれています。ブナ科シイ属の常緑広葉樹であるイタジイの森は、樹冠がもこもことしていることから「ブロッコリーの森」と呼ばれ、入館者の方にも「ぜひ、森の中でイタジイを見つけてみてください」とご案内しています。

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やんばる森のおもちゃ美術館の館内の様子(上)と、沖縄県産材の木のおもちゃ

 

 館内では、県内の木工作家8人が制作した沖縄の木のおもちゃや、ヤンバルクイナの木を使ったたまごプールなど約200点の遊具を楽しめます。「世界一木目が美しい」といわれるリュウキュウマツをはじめ、「日本一大きなどんぐり」をつけるオキナワウラジロガシ、うりずん(初夏)の季節に真っ赤な花を咲かせるデイゴなど、沖縄ならではの木材をふんだんに使ったおもちゃを手にとって遊ぶことができます。

 さらに、昨年春からは新たなプログラムとして月に2回、「草編み体験ワークショップ」を開いています。世界屈指の草編み文化を誇る沖縄で、受け継がれてきた技術を県外から来たお客様も体験できる内容です。地域で採集できるマーニやアダンといった植物の葉を使い、お手玉遊びもできる「アダンボール」や、ハブの形をしたおもちゃ「指ハブ」、森の中でそりすべりができる「マーニのそり」などをつくるプログラムは、子どもから大人まで幅広い世代に大好評です。

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草編み体験ワークショップの様子

 

森林部だけでなく沖縄全体で「木育」推進へ

 沖縄本島は、縦長の形をしていて、森林のあるエリアと都市部のエリアが離れています。森林部のやんばるだけで取り組んでいても「木育」がなかなか広がらないという課題意識から23年1月、沖縄県と国頭村の共催のもと「沖縄木育サミット」を那覇市内で開催しました。世界自然遺産登録で「やんばるの森」が注目されるとともに、19年に焼失した首里城の「令和の復元」で国頭村産のオキナワウラジロガシをはじめ多くの国産材が活用されることへの県民の関心の高まりが背景にありました。

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沖縄県で開かれた「木育サミット」では、ウッドスタート宣言調印式(上)やパネルディスカッションがあった

 

 木育サミットでは、県として木育を推進していくことを掲げる「ウッドスタート宣言」がなされ、調印式もありました。パネルディスカッションでは、保育園や森林セラピーガイドなど、いろんな立場で木育にかかわる人たちが参加。「沖縄の森・沖縄の木」が子どもの成長や、高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上や介護予防にどのような価値があるのか、などを語り合いました。やんばる森のおもちゃ美術館との“出会い”をきっかけに木育に関心を持った大学生は、地元のリュウキュウマツによる「ゴーヤーチャンプルー積み木」を独自開発して、「2022年 手作りおもちゃコンテスト」で優秀賞に輝いたエピソードを披露しました。

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大学生がつくったゴーヤーチャンプルー積み木

 

 木育はまだまだ県内では知名度が低いものの、移動型おもちゃ美術館なども通じて、県民の意識を醸成していきたいと思っています。今後、やんばる森のおもちゃ美術館は役場、道の駅などとも連携して様々な商品化を目指し、県内の子どもたちへの木育を広げていきます。そのためのチャレンジが始まっています。

 (東京おもちゃ美術館 高野祥代)

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