木育とおもちゃ美術館

全国に広がるおもちゃ美術館と木育 長門おもちゃ美術館②

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長門おもちゃ美術館の「木のたまごプール」=写真はいずれも同館提供

 

地域の子どもと成長する「木のたまごプール」

 全国のおもちゃ美術館には「木のたまごプール」が必ずあります。地域木材でつくったたまごが何千、何万個も入ったプールの中に子どもも大人も体を埋もれさせて“五感”で木の魅力を味わうことができます。

 ゴロゴロと音を立てながら、木のたまごをかき分けて歩いたり、底に隠れた“お宝”を探してみたり。手足を伸ばして全身で木に触れ、木の香りを楽しむ姿は、おもちゃ美術館ならではの光景です。

 山口県長門市の長門おもちゃ美術館には、4500個もの木のたまごが入ったプールが館内の中心にあります。このうち3000個は、同館を運営するNPO法人「人と木」のスタッフが山口県長門市内の小中16校に出向いて指導し、2000人超の子どもたちによってつくられました。たまごづくりを通して木の香りや感触を楽しみ、地元の「長門の森」やおもちゃ美術館を知る機会になったと思います。

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小学生たちによる木のたまごづくり

 

 木のたまごはいまも増え続けており、おもちゃ美術館の“成長の象徴”ともいえます。みんなに愛される「ぼくの」「私の」おもちゃ美術館をつくり出しています。小中学生たちは木のたまごを二つつくり、一つは館内へ、もう一つは思い出の品として持ち帰ります。

 次回訪れた時には自分の名前が入った木のたまごを探し、スタッフと再会を喜ぶ姿もまた、長門おもちゃ美術館ならではの光景です。スギとヒノキを材料としていたたまごづくりも、いまではシイの木も使い、広がりを見せています。

 

木や森に触れる機会をつくる人材の「育成」にも力

 こうした木のたまごのワークショップを指導するのは、長門市在住の木のおもちゃ作家です。館内のおもちゃを多数手がけるだけでなく、工具を使ったおもちゃづくりの指導などもし、おもちゃ美術館を盛り立てています。

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地元のおもちゃ作家による木の積み木&パズル「NEKO PAZU」(上)と銀杏の積み木

 

 子どもたちが安全に遊べるように配慮されたおもちゃは、木と人の温もりを感じます。木のおもちゃに夢中になる子どもの姿を見た大人にとっても、遊びの無限なまでの広がりを感じる機会となります。「Made in 長門」のおもちゃで遊ぶことのできる長門おもちゃ美術館は、観光客だけでなく、地元の方々にも“長門再発見”の館になっています。開館当初に描いた夢が、館の成長とともに形になっています。

 NPO法人「人と木」は、おもちゃ美術館で活動する「おもちゃ学芸員」をはじめ、市内で木育活動を推進する人材育成にも力を入れています。おもちゃ学芸員たちはまさに、おもちゃ美術館と地域の森をつなぐ案内人。座学と実技を合わせ18時間の講習を受け、自然体験に必要なスキルやリスク管理などを学びます。

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おもちゃ学芸員を育成する講習の様子

 

 多様な人材を育成し、タテ・ヨコのつながりを深めながら進める市との「長門木育推進プログラム」も目が離せません。こうした木育活動は、檜原森のおもちゃ美術館(東京都)と並び、全国の姉妹おもちゃ美術館の先駆けになっています。

 (東京おもちゃ美術館 橘高春生)

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