木育とおもちゃ美術館

老いも若きも集う「木育」の拠点 2023年も各地で続々

 地域材をふんだんに活用し、「木」の持つ素晴らしさを「おもちゃ」「遊び」、そして「空間」「デザイン」を通して、その地域の「ヒト」が伝える「おもちゃ美術館」。いま、全国にこのおもちゃ美術館という“森”が広がりつつあります。

 2008年に東京おもちゃ美術館がオープンして以来、現在までに全国各地に計10館が設立されました。近いところでは22年11月19日に、木曽おもちゃ美術館(長野県木曽町)がグランドオープン。23年は、3月に「那賀町山のおもちゃ美術館」(徳島県那賀町)が、夏に「さかわ木のおもちゃ美術館」(高知県佐川町)がオープン予定です。さらに24年度以降、静岡県御殿場市、奈良県三郷町にも、おもちゃ美術館ができる予定です。

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大勢の人が訪れた「木曽おもちゃ美術館」開館セレモニーの様子=写真はいずれもおもちゃ美術館提供

 

 「木育」拠点たるおもちゃ美術館が東京・四谷で産声をあげたのは08年。この「社会的実験」が、どうしてこのように大きなうねりとなって全国に広まっているのでしょうか。

 そもそも「木育」ということばは、北海道で生まれました。しかし、もとをたどれば1997年の第3回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」に行き着きます。ここで、温室効果ガスの削減対策と同時に「吸収源」として森林や農地で吸収される炭素をカウントできるようになり、森林の持つ価値が新たに認められたことが、森林への関心を高めることになりました。その後、SDGsへの興味関心の高まりやカーボンニュートラル、脱炭素社会への転換、さらには度重なる豪雨災害の激甚化もあいまって、森林の機能が注目されたのです。

 ところが日本の森は、その多くが“高齢化”。もともと備えている多面的機能をいかんなく発揮できる状態ではなくなっていました。そこで、木材利用の促進がうたわれ、森林の持つ循環機能を生かしながら、森の力を発揮できるようにしていく。そのために「材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ、木材利用に関する教育活動」(「2006年森林・林業基本計画」より)としての木育が、動き出すことになりました。

 その動きに一石を投じたのは、ほかでもない東京おもちゃ美術館です。木材利用の促進という意義もふまえつつ、「木の活動」を通して「子どもの豊かな心を育むもの」として焦点をあてることにしました。

 具体的には、林野庁とも連携しながら、「木育キャラバン」という木のおもちゃを楽しめるイベントで全国行脚を始めたり、「木育インストラクター」という資格認定講座を開き、木育の担い手を育成したりしました。「木育円卓会議」では“川上”から“川下”まで木に携わる地域の人たちと、木育推進のあり方について熱い議論を交わしました。なかでも全国の自治体と連携した「ウッドスタート」という「誕生祝い品を地産地消の木製玩具にする取り組み」は、またたくまに全国に広がり、今や全国54市区町村、3県が「ウッドスタート宣言」をするに至りました。

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滋賀県甲賀市でのウッドスタート宣言

 

 おもちゃ美術館はまさに、老いも若きも地域のすべての人たちが地域の木に触れ、遊びを通して木のよさを体感できる拠点。全国各地に次々に建設されるようになったのです。

 今年も次回(2月配信)以降、これまで紹介できなかったおもちゃ美術館の取り組みを紹介していきます。

 (東京おもちゃ美術館副館長 馬場清)

 

■お知らせ

  ◇『全国おもちゃ美術館オフィシャルファンブック』が刊行されました。巻末には各地のおもちゃ美術館をめぐるオリジナルの「すごろく」が付いており、遊び心満載のファンブックになっています。さらには、ご朱印帳よろしく、各地のおもちゃ美術館をめぐってスタンプを集めると、素晴らしいプレゼントがもらえる企画も用意。ぜひお買い求めください。

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 ◇1月15日(日)午後1時から、那覇市の琉球新報ホールで「沖縄木育サミット」も開催予定です(参加費無料・事前申込制)。世界自然遺産に登録されたやんばるの森を擁する沖縄ならではの木育の活動を紹介いたします。ふるってご参加ください。

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