木育とおもちゃ美術館

全国に広がるおもちゃ美術館と木育 檜原森のおもちゃ美術館③

「木育の伝え手」を育てる

 前回は、檜原森のおもちゃ美術館の建物と空間デザインができるまでのストーリーをお伝えしました。完成した木育空間の魅力を、より多くの方に伝えていくためには、「人」の力が不可欠です。今回は、檜原森のおもちゃ美術館を様々な形で支え、ともにつくる「人」をどのように集め、どのように育てているか、お伝えしていきます。
檜原森のおもちゃ美術館では、「おもちゃと遊びの案内人」「木育の伝え手」となる「おもちゃ学芸員」の養成講座を開館までに4回開催しました。1回の定員は30人ですが、毎回定員を超える応募がありました。そして、約120人の赤いエプロンを着用した「おもちゃ学芸員」とともに開館を迎えました。

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「おもちゃ学芸員出発式」のセレモニー=写真はいずれも東京おもちゃ美術館提供

 

 おもちゃ学芸員が「木育の伝え手」となるために、大きく二つのことを企画しました。一つは、檜原村の森林への理解を深めるためのスタディーツアー。木の空間の中で、木のおもちゃの魅力や豊かさを伝えていくためには、「森」から知る必要があると考えました。林業家から森林を案内してもらったり林業の説明を受けたりし、村内の製材所や木工品をつくるおもちゃ工房などを見学。実際に山の中へ足を運んで森の美しさを実感するとともに、村の森林の魅力を自身の目で見ることで、館内でのお客様とのコミュニケーションに生かしてもらいます。

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森林めぐり(上)や製材所見学などがあるスタディーツアー

 

 二つ目は、おもちゃ学芸員養成講座内での木育プログラムです。おもちゃ学芸員養成講座のプログラムに、木育についての講義とワークショップを採り入れ、同館のおもちゃ学芸員の必修科目としています。ワークショップは、クロモジの枝からバードコールをつくるもの。クロモジは爪ようじに使われることでも有名な木材であるという文化にも触れながら、手でさわり、匂いを嗅ぎ、木目をじっくり見て、でき上がったバードコールで音を鳴らす……。まさに木材と向き合いながら進めるワークショップとなり、おもちゃ学芸員自身の心が動き、来館者に木の文化を伝えるヒントを与えるものになりました(※現在はワークショップの内容が異なっています)。

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クロモジのバードコール

 

多くの人たちが、檜原村のチャレンジを応援する

 同館は、周辺の豊かな自然環境を生かした「そとあそび」プログラムを進めるにあたり、多額の資金が必要でした。そこで、「そとあそび」の充実を目指したクラウドファンディングに挑戦。日本全国からその取り組みを応援したいと、のべ418人の方から600万円以上の支援が集まりました。
おもちゃ学芸員としての参画が難しいものの、檜原村トイビレッジ構想に共感し、檜原森のおもちゃ美術館を応援したいという方は全国に多くいらっしゃり、クラウドファンディングはそのような方たちが「支援」という形で関わるきっかけにもなりました。出資者には返礼品として村の針葉樹をモチーフにした木工品「ひのはらつみき」を届けました。これは、館内に設けたサポーターズ・ボードに「植えに」来ていただくもので日々、ひのはらつみきの「森」が完成に近づいています。

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クラウドファンディングのWEBページ

 

 

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出資者への返礼品「ひのはらつみき」

 

豊かな自然環境を生かした「そとあそび」

 今夏からそとあそびプログラムを本格稼働することにしています。充実したプログラムのためには、楽しさを伝えられる「人」が不可欠。おもちゃ学芸員のステップアップ講座として、「そとあそび学芸員」養成講座を新設しました。屋内と屋外の遊びを結びながら展開する木育は、檜原村の立地と地域性を生かしたオリジナルプログラムとなります。

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「そとあそび学芸員」の養成講座

 

 村の環境や規模に合わせて誕生した檜原森のおもちゃ美術館。そとあそびや木のおもちゃで遊ぶ体験を通して環境意識を育み、木を暮らしに意識的に採り入れる人を世代を超えて増やしていくことを目指しています。東京の森を育んできた小さな村で始まる木育は、ここを拠点として、多くの人たちとつながり関わりながら、今まさに成長しているところです。

(東京おもちゃ美術館 高野祥代)

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