木育とおもちゃ美術館

全国に広がるおもちゃ美術館と木育 徳島木のおもちゃ美術館②

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「ごっこフォレスト」の全景。森のことを遊びながら学べる空間=以下、写真はいずれも東京おもちゃ美術館提供

 

「ごっこ体験」で楽しみながら森のめぐみを知る

 2021年10月24日にオープンした「徳島木のおもちゃ美術館」。12月末までになんと延べ3万人以上の方々が来館されました。このペースでいくと、1年間で延べ18万人以上。全国各地のおもちゃ美術館の中でも「最多記録」となります。これだけの集客があるのはなぜでしょうか。

 もちろんできたばかりという、もの珍しさもあるとは思いますが、私(馬場)はここに「木育」の価値とこれからの展望が開けているような気がしてなりません。

 この美術館の中央には、「ごっこフォレスト」という空間があります。その名の通り、「ごっこ遊び」をしながら、森のこと、木のこと、林業のこと、時には自然環境や地球環境についても学び、知るスペースです。私たちは木育を、単に頭で学ぶ、知識を得るものとは考えていません。そのため館内には、よくある解説パネルや説明文はほとんどありません。むしろ「体験(Experience)を通して学ぶ」「楽しみ(Enjoy)ながら学ぶ」「互い(Each other)に学ぶ」……という“三つのE”を大切にしています。

 例えば、ごっこフォレストには「収穫」を体験できるスペースがあります。「収穫遊びごっこ」です。まず目を引くのは、面積の多くを占めているシイタケ栽培用の「ほだ木」。よくよく探してみると、毒キノコや巨大シイタケがみつかります。ちょっと足を延ばすと、リアルなタケノコもあります。もちろん徳島を代表するスダチやユズも収穫できます。子どもたちは用意された籠がいっぱいになるまで、収穫を楽しみます。

 

AIIBA電子工房株式会社代表取締役

「収穫遊びごっこ」ができるコーナーではシイタケだけでなく、毒キノコもみつかる?

 

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木で作られたリアルなタケノコ

 

AIIBA電子工房株式会社代表取締役

全国1位の生産量を誇るスダチの疑似収穫もできる

 

 隣には「薪(まき)割りごっこ」ができるコーナーも。パカッと見事に割れたときの快感は、子どものみならず大人も癖になることでしょう。薪割り体験を通して、木の性質や質感、木目の美しさを知ることができます。

 また、定時になるとどこからか軽やかな音楽が聞こえてきます。木製からくり「山の仕事」が動き出す時間です。このからくりは「木の伐採」「搬出」「加工」といった、まさに森の循環を五つのカテゴリーで表しています。最後には木のおもちゃができて、赤ちゃんが遊ぶシーンで終わります。子どもたちに親しみをもってもらうためにクマ、ウマ、ウサギなどのかわいいキャラクターが一生懸命、仕事に励んでいます。ちっちゃいどんぐりをみつけるのも楽しみのひとつ。こうして子どもたちに、からくりの動きを楽しんでもらいながら、森の循環を伝えます。

 

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「薪割りごっこ」ができるコーナーでは、小気味いい音とともに実際に近い状況での体験も

 

AIIBA電子工房株式会社代表取締役

森の循環を表す木製からくり「山の仕事」。定時になると動き出す

 

 このように体験を通して楽しみながら、森のこと、木のこと、林業のことを学び、さらにはその場で交流も生まれます。

 館内のあちこちにある木のおもちゃは、まさにコミュニケーション・トイ。知らない人同士、年齢も、国籍も超えて、遊びを通して人と人をつなぎます。赤いエプロンをつけた「おもちゃ学芸員」がまた、その仲立ちをすることもあります。この学芸員は2日間の養成講座を受けたボランティアスタッフ。講座で徳島県の森のことから木のおもちゃの遊び方にいたるまでを学んだ人たちです。いわば“森の伝道師”。この方々と一緒に館内にある木の遊具やおもちゃで遊びながら、徳島の森のことを学ぶことができるのです。こうした数々の“しかけ”によって、木育の価値が伝わり、評判が評判を呼んで、多くの人に来ていただいているのではないでしょうか。

 

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赤いエプロンをつけた「おもちゃ学芸員」のスタッフら

 

 (東京おもちゃ美術館副館長 馬場清)

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