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アメリカで注目されるエコロジカルな森林業と「受動的な森林管理」

「受動的な森林管理」とは

 本稿では、アメリカの森林面積の37%を占め、厳格な保護地域と集約的な木材生産林との中間的存在であってエコロジカルな森林業の舞台として期待が高まっている家族的所有林の近年のトレンドについてみることとしたい。

 皆伐、一斉植林方式の画一的な林業と一線を画するエコロジカルな森林業では、非木材森林産品、生物多様性、カーボン、レクリエーション利用など森林環境の幅広い恵み(生態系サービス)の維持、増進を目的として、生態的に望ましいタイミングで森林構造の複雑化を促す方向での人為が加えられる。この際、森林内の特定の樹木(単木)から群状の樹木の集団、さらには広域の森林全体など様々なスケールで保残を図る取り組みが行われる。これらの保残の取り組みは「受動的な森林管理」の一環とされる。

 受動的な森林管理では、人為に代わって自然プロセスを主要な変化の駆動力とすることが大きな特徴である。たとえば、木材収穫、建物建築、車によるレクリエーション利用を行わない一方で、侵略的外来植物の管理、木の実・キノコ・樹液など木材以外の森林産品の個人的な利用、および車によらないレクリエーション利用などを許容する取り組みは受動的な森林管理に含まれる。

 これは従来から行われてきている強度の間伐などを行う「能動的な森林管理」と対立する概念ではなく、場所や時間によって両方を使い分けて互いに補完する関係にある。すなわち、能動的な森林管理と受動的な森林管理は、どちらもエコロジカルな森林業の手段として使われているのである。

家族的森林所有者の位置づけと所有理由など
 アメリカの森林を所有者別に見ると家族的所有林の割合が37%と最も高く、企業有林の22%、連邦政府有林の29%を上回っており、その他は州有林7%、地方政府有林2%、先住民有林2%となっている(2023年現在)。家族的森林所有者とは、0.4ha以上を所有する家族、個人、トラスト、エステイト、家族パートナーのことである。アメリカには1,100万人の所有者がいるが、面積的には4ha以上の所有者360万人の所有林が92%を占めている。

 家族的森林所有者の多くは固定資産税や、将来世代に土地を現状の状態で継承することに関心があるが、商業的な木材収穫など伝統的な森林管理を行っている者は少ない。多くの所有者は薪(まき)など個人的な利用のための収穫を行い、野生生物の生息地の向上や侵略的外来種の管理を行っているが、経営計画の策定や政府の支援プログラムへの参加は極めてまれである。

 2012年に行った調査では、所有理由としては図に示したように、美や景観を楽しむ、野生生物の生息地の保護、相続、自然や生物多様性の保護、プライバシー、水資源保全、住居の一部などが多くなっている。より最近の調査でも所有理由には大きな変化はないが、平均年齢が68歳と高齢化が進んでいるとともに所有者の女性率が高まっており(男性率は75%)、また商業的および個人的な利用のための木材収穫の減少と相まって所有理由として木材生産を挙げる人がさらに減少している。

家族的森林所有者の受動的な森林管理への態度
 ニューイングランド州の家族的森林所有者を対象に、受動的な森林管理への態度を調べた調査によれば、回答者の3分の1以上の所有者が受動的な森林管理を行っていると回答した。それらの人々が森林の管理目的として「極めて重要」、および「非常に重要」としたものは、自然への結びつき(83%)、野生生物の生息地と生物多様性の保全(82%)、プライバシーの確保(73%)、田舎の慣習の保持(64%)、気候変動の緩和(56%)である。また、将来計画している利用は、車によらないレクリエーション(89%)、薪集め(76%)、狩猟(67%)、キノコなど木材以外の産品の収穫(63%)、フォレスターからの助言を得る(60%)であった。

 本調査から分かることは、受動的な森林管理に関心のある家族的森林所有者は、森林管理に無関心という訳ではなく、生物多様性保全、気候変動の緩和、自然とのつながりを重要な森林の管理目的として考えており、車によらないレクリエーション利用やフォレスターの助言を得ることにも積極的であることである。
 (フォレスティング研究所/上智大学客員教授・柴田晋吾)

 参考文献
Family Forest Ownerships Trends in the United States,2013–2023: Results from the USDA Forest Service, National Woodland Owner Survey Brett J. Butler Journal of Forestry
https://doi.org/10.1007/s44392-026-00090-z
Understanding Passive Forest Management on Family Forest Owned Land in New England to Further Ecological Forestry Lina Denaroso1 ・ Paul Catanzaro1,2 ・ Marla Markowski‑Lindsay1,2 Journal of Forestry (2025) 123:265–291
https://doi.org/10.1007/s44392-025-00013-4

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