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日本の民間企業の森林利用の実態についての調査結果

 日本の民間企業のCSR活動や社員の福利厚生・研修等のための森林利用の実態を把握することを目的として、筆者らは森林に関する取り組みを行っている全国の企業500社を対象に、2021年10月~2022年1月にアンケート(回答数:128社)(1)を行った。前回に続いてその結果を紹介する。

 企業が実施している森林関係の活動としては、「森林の整備・保全」(61.7%)、「従業員主体の森林づくり活動への支援」(50.0%)、「森林に関わるNPO等への支援・寄附」(28.9%)が多い。今後新たに行いたい活動としては、「森林を活用した従業員研修」(18.0%)、「子供・地域住民・市民向けイベント」(15.6%)、「森林を活用した従業員健康づくり」(14.8%)となっている。

 活動を始めた時期は、「2006~2010年」(34.4%)が最も多く、次いで「2016年以降」(21.1%)が多い。また、活動を行っている森林は、「協定林」(72.7%)が多く、「所有している」(11.7%)や「借入している」(11.7%)は少ない。期待する効果(主な目的)と実際に得られた効果は、いずれも1位が「社会貢献」、2位が「地域との交流」、3位が「事業活動による環境負荷の低減」となった。

民間企業の社員や一般市民が参加した森林整備活動の様子(提供:京都府森づくり振興課)

 活動に際して苦労していることを尋ねたところ、「特になし」(32.0%)が最も多く、次いで、「社内での説明・理解」(22.7%)、「社外の参加者集め・広報」(21.1%)、「予算確保」(20.3%)が続く。また、森林・林業・木材利用に関わる活動を拡大していくための必要条件を尋ねたところ、「森林に関わる企業側のメリットについての情報」(72.7%)や「企業との連携に積極的な森林組合・林業事業体等の紹介」(35.9%)が多かった。

 民間企業の社員や一般市民が参加した森林整備活動の様子(提供:京都府森づくり振興課)さらに、森林が果たしている災害防止、二酸化炭素の吸収、水源保全、生物多様性保全などの多様な生態系サービスに対して土地所有者に支払いを行っているかを尋ねたところ、「実施している」(25.8%)、「実施していないが、将来的に実施の可能性があると思う」(18.8%)、「実施しておらず、将来的にも実施の可能性はないと思う」(52.3%)となった。 自社の活動により提供される森林の多面的機能に対して、他企業やNPO等から支払いを受けているかを尋ねたところ、「支払いを受けている」(3.9%)、「支払いを受けていないが、将来的に受ける可能性があると思う」(5.5%)、「支払いを受けておらず、将来的にも受ける可能性はないと思う」(89.1%)となった。さらに、アロマなど森林からの新しい産品の商品開発については、「実施している」(5.5%)、「実施していないが、将来的に実施の可能性があると思う」(14.8%)、「実施しておらず、将来的にも実施の可能性はないと思う」(79.7%)となった。

市民の水道料金収入の一部を用いて横浜市水道局が管理している山梨県道志村の森林。ヒノキ林を混交林に転換するための取り組みを実施している(2018年4月撮影)

 一方、森林のいやし効果、健康増進効果を活用できる仕組みを従業員の福利厚生制度に取り入れているかについては、「実施している」(15.6%)、「実施していないが、将来的に実施の可能性があると思う」(46.9%)、「実施しておらず、将来的にも実施の可能性はないと思う」(35.9%)となった。従業員の研修への森林空間の活用の有無については、「実施している」(26.6%)、「実施していないが、将来的に実施の可能性があると思う」(38.3%)、「実施しておらず、将来的にも実施の可能性はないと思う」(32.0%)となった。
 これらの調査結果より、森林に関する取り組みを行っている企業の取り組みの内容やその効果、それらの企業が直面している課題、今後の活動拡大のための課題などについての大まかな傾向を把握することができた。また、自社の活動により提供される森林の生態系サービスに対して他企業やNPO等から支払いを受けているケースや、森林からの新しい産品の商品開発を行っているケースは少なく、将来的にも実現の可能性はないと考えている企業が多かった一方で、生態系サービスに対する土地所有者への支払いや、社員の福利厚生や従業員研修のための森林の利用については、ある程度の企業がすでに実施しているか、将来的に実施の可能性があると考えていることも分かった。
 企業による森林の多面的な活用やウェルビーイングの重要性は高まっており、調査結果は現在でも示唆に富む内容といえよう。

 (上智大学大学院地球環境学研究科客員教授、柴田晋吾)

 [参考文献等]

(1)柴田晋吾.柘植隆宏.高橋卓也. 2022.上智大学学術研究費重点領域研究特別推進採択課題:森林環境の生態系サービス実現のための革新的手法と戦略についての研究:持続可能な地域づくりをめざして(INNOFES)成果報告書.

注:柘植隆宏教授を中心に実施した民間企業を対象としたアンケート結果を、ご了解を得て引用させていただいた。

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