日本の都市住民等の森との関わりについての調査結果
森林が有している様々な価値(生態系サービス)の提供者である全国の森林所有者、およびそれらの価値を享受する需要者である都市住民と森林に関する取り組みを行っている民間企業の森林との関わりの状況を明らかにするために、筆者らは2021年に全国規模のアンケート調査を行った。今号では、都市住民等を対象とした調査結果から抜粋して紹介する(1)。

本調査では、調査会社にモニターとして登録している日本全国の20~69歳の男女を対象として、森林でこれまでに体験した活動、今後体験したい活動をオンラインで尋ねたところ1084人から回答を得た。調査に当たっては、全国を6ブロックに分けて、ブロックごとに年齢や性別の構成比が母集団と概ね同じになるようにサンプリングを行った。
これまでに体験したものについての活動ごとの回答率は、家族や友人とのキャンプが52%で最も高く、続いてアスレチック29%、山菜やキノコの採取25%、野生生物の観察17%、森林浴・森のセラピー的利用12%、マウンテンバイク8%、ソロキャンプ5%、森林環境教育5%、グランピング4%、トレイルランニング4%、森のようちえん2%、森でのリモートワーク1%、森林での企業研修1%となった(図1)。


山奥に分け入るネマガリタケのタケノコ狩りはクマとの遭遇や遭難の危険がある。写真はガイド付きのタケノコ狩りのイベントに集まった人々と採取されたタケノコ(新潟県湯沢町、2022年6月)
また、今後体験したい活動は、森林浴・森のセラピー的利用25%、家族や友人とのキャンプ24%、山菜やキノコの採取21%、グランピング20%、野生生物の観察17%、アスレチック15%、ソロキャンプ15%、森林でのリモートワーク10%、マウンテンバイク10%、森林環境教育8%、トレイルランニング8%、森のようちえん6%、森林での企業研修5%となった(図1)。グランピング、ソロキャンプ、森でのリモートワークなどは比較的新しい活動のためか体験者は少ないが、今後体験したいと答えた人の割合は高くなった。
29.5%の回答者はいずれの活動にも参加したことがなく、35.8%の回答者は今後体験したいと思う活動がないとした。以上の結果から、森林での活動について関心が高い人々が全体の6割前後と多数派を占めていることが分かった。
また、コンジョイント分析などの環境評価手法を用いて、様々な生態系サービスへの支払い意思額を調べるために、質問ごとに内容を変えて以下のような質問を行った。

「森林1は、通常のキャンプ、フィールドアスレチック、森林でのリモートワークが可能で利用料金は一人一回あたり2000円です。一方、森林2は山菜・キノコの採取、野生生物の観察、森林浴・森のセラピー的利用が可能で利用料金は一人一回あたり1000円です。それぞれの森林でできる活動と利用料金を比較して、利用したいと思う方を選択してください。」
基本モデルによれば、支払い意思額が高かったのは、グランピング1291円、森林浴・森のセラピー的利用1012円、山菜やキノコの採取602円であった(図2)。グランピングや森林浴・森のセラピー的利用は、その活動の「珍しさ」や「新鮮さ」などから高い数値になった可能性がある。一方、森林でのアスレチックと野生生物の観察は統計的に有意でなかった(つまり、支払い意思額がゼロである可能性が否定できない)。さらに、ある活動をこれまでに体験したことがある回答者や、その活動を今後体験したいと思う回答者は、多くの場合、その活動に対して高い支払い意思額を示し、体験したことや今後体験したいと思うものがひとつもない回答者はそれぞれの活動に対してより低い支払い意思額を示すことも分かった。
(上智大学大学院地球環境学研究科客員教授、柴田晋吾)
[参考文献等]
(1)柴田晋吾.柘植隆宏.高橋卓也. 2022.上智大学学術特別推進採択課題:森林環境の生態系サービスの実現のための革新的手法と戦略についての研究:持続可能な地域づくりをめざして(INNOFES)成果報告書.
注:需要サイドの調査分析結果は柘植隆宏教授を中心に実施したものを、ご了解を得て引用させていただいた。また、本稿の作成にあたって、高橋卓也教授、および柘植隆宏教授に有益なコメントをいただいた。

