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国有林からクリスマスツリーを・・・

 アメリカ国有林で究極の国民参加とも言える粋な取り組みが行われている。一般国民が自分の好きな国有林に行って、クリスマスツリーとして使うために好きな木を選んで切り出すことができるというものだ。「地域の国有林に入って自分の特別な木を見つけることで、家族の宝物の思い出と物語ができる。このように人々が森とつながる貴重な経験によって、生涯を通じて管理に参加し、責任を持つ思いが養成されるであろう」とランディ・ムーア森林局長は述べている。

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USDAFSウェブサイトから

 購入方法は指定のウェブサイトにアクセスして、自分の好きな国有林を選ぶと、切り出せる区域の地図などの情報が得られ、誰でも簡単に許可券を購入することができる。全米の国有林で実施しており、例えば、カリフォルニア州では、タホ、クラマス、メンドシ―ノ、プルマスなど10カ所の国有林から選ぶことができる。国有林を訪問する際には、購入した許可券をプリントして、車のダッシュボードに表示しておく必要がある。

 この取り組みに対する参加者の評判は極めて高く、昨年度は1200人の購入者のうち90%がその体験について、4つ星または5つ星の評価をつけているという。たとえば、カリフォルニア州タホ国有林でこの体験を行ったマルチナさんは、「家族でクリスマスツリーの許可券を購入して自分たちの木を切り出してきた。自分と家族にとって忘れがたい思い出づくりを可能にしてくれたこの取り組みに感謝したい」と言っている。さらに、エブリィ・キッド・アウトドアパスを持っている4年次のこどもは、このクリスマスツリー許可券が無料になる。また、全ての年齢のこどもたちが、クリスマスツリーのオーナメントのページにアクセスして思い思いに色ぬりや飾りつけを行うことができる。

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写真はいずれも、RECREATION.gov.ウェブサイト(https://www.recreation.gov/tree-permits)から

 このプロジェクトはこのように人々の森へのつながりの維持、環境教育や普及啓発などの目的に大きな役割を果たしているが、そのもともとの狙いはアメリカで破滅的な森林火災の原因とされている小径木が密生している森林の間引きをすることで、森林の健全性の向上を図ることにある。あらかじめ専門家がクリスマスツリーにふさわしい小径木が生えており、それらの抜き切りをすることで健全性の向上に資すると考えられる区域を見いだして設定しているのである。

 翻って、日本の国有林を考えてみるとどうだろうか?「国民の森林(もり)」というキャッチフレーズを使うようになって久しいが、国有林地域の住民や企業の森関係者など以外の都市に住む一般の人々にとっては、国有林は縁遠い存在と考えている人が多いのではないだろうか。管理責任の面からやむを得ない面があるのであろうが、日本の国有林はたいてい林道の入り口で鍵がかけられており、国有林管理の業務以外で入るのは厳しくシャットアウトされている。しかしながら、国有林ほど人々の健康を維持し、人々と森とのつながりを取り戻すのに絶好のフィールドはない。真に「国民の森林」を標榜(ひょうぼう)するのであれば、都市住民などの一般市民向けの斬新な施策を打ち出す余地が大いにあるであろう。このアメリカのプロジェクトは、そのことを検討するために良い参考事例になるであろう。

 (上智大学客員教授 柴田晋吾)

参考文献

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