FOCUS

マクドナルド、良品計画… 建築物木材利用促進協定で温暖化防止

 

 

%e7%89%9b%e4%b9%85%e5%ba%97%e2%91%a0

国産材を使って2019年12月にリニューアル・オープンした牛久店(茨城県牛久市)の建築時の様子=同社提供

 

 温室効果ガスの抑制が世界的な課題となり、大気中の二酸化炭素を吸収・固定する森林を維持・育てていく重要性が高まるなか、国や自治体が、企業などと国産材を活用する協定を結ぶ取り組みが広がっている。

 全国に3千店近くを展開しているハンバーガーチェーン大手の日本マクドナルドは今年2月、1店舗当たり、一定量以上の地域材を利用する設計を基本とし、3年で計5550立方㍍の地域材を使うことを目指す協定を、農林水産省と締結した。

%e7%ab%b9%e7%94%b0%e8%a1%97%e9%81%93%e5%ba%97

2021年12月にリニューアル・オープンした竹田街道店(京都市伏見区)=同

 

 同社はこれまでも新規出店や店舗の建て替えなどで国産材を外装や構造材に活用してきたが、協定を機にさらに取り組みを進めることにした。木材利用の意義やメリットについても、積極的に情報発信するという。

 「無印良品」ブランドの小売り事業を展開する良品計画も今年5月、農水省と同様の協定を締結。店舗の内外装材や構造材に国産材の活用を進め、5年間で1万立方㍍の国産材を使用するという。

 良品計画は2003年から、グループ企業の「無印良品の家」を中心に建築事業を展開している。このノウハウを生かし、良品計画の店舗の木造化や木質化を進めていくとしている。

 この建築物木材利用促進協定の制度は、21年10月施行の「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に伴い創設された。建築する事業者が国か自治体と、木材利用促進の構想を盛り込んだ協定を締結するもの。

 協定による事業者のメリットについて林野庁は、①環境意識の高い事業者として社会的な評価や認知度が向上する②国産材利用による炭素固定など環境保全の取り組みが、ESG投資のような新たな資金源の獲得につながる可能性がある③国や自治体の財政支援を受けられる可能性もある、といった点を挙げる。

 国と事業者との協定は日本マクドナルドや良品計画など、すでに十数件ある。地方公共団体と事業者との協定は40件近くにのぼる。福井県経済団体連合会と福井県、学校法人・立命館と大分県、伊予銀行と松山市などがある。

 立命館は21年に大分県と協定を締結した。大学施設の建設で内外装材や構造材に地域材を積極的に活用していくとしている。伊予銀行は松山市と今年1月に協定を結び、店舗ロビーなどの顧客利用スペースの床や壁などの内装材、椅子などに地域材を活用し、木材の良さをアピールしていくという。

 最近の国産材(燃料、しいたけ原木を含む)の供給量は直近で年間3300万立方㍍ほど、木材自給率は約40%だ。林野庁は、国産材の供給量を30年度に4200万立方㍍にまで高めたいとしている。

 国産材の活用を進めるうえで、課題はコストだが、林野庁木材利用課の担当者は、国産材と外材との価格差は縮まってきてはいるといい、「地域に貢献したいと、意識の高い企業は多い」と期待する。

 「日本の建物では3、4階建てくらい中層の非住宅の店舗などに木造が少なく、そこに国産材の利用を勧めていきたい」

 日本の林業、木材産業は、森林所有者や伐採業者などの「山元」、丸太を加工する製材、合板工場などの「川中」、そして「川下」と呼ばれる住宅メーカーや工務店とサプライチェーン(供給網)が多層化しており、山元にお金がわずかしか回らない。また川下の木材需要に川中、山元の経営が大きく影響を受けることが課題になっている。

 林野庁は、国産材の利用が進むと、山元や川中は事業の見通しに基づく経営安定化を図ることができると期待する。また、林業が環境保全になることも人々に広く知ってもらいやすくなる。

 協定の取り組みを進め、地域産材が活用されることで、「(伐採後に植林する)再造林に寄与し、山元にも貢献する」と担当者は期待を口にする。

 (浅井秀樹)

 

PAGE TOP