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林業復興のカギは乾シイタケ!?

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クヌギの木に育ったシイタケ=2015年、大分市(C)朝日新聞社

 

 収穫の秋を迎え、キノコ類も豊富に出回る季節となった。とくに栽培キノコ類が、木材とともに林業産出額の半分近くを占めていることを知っている人は少ないかもしれない。

 農林水産省統計の林業産出額は2020年で4831億円。そのうち栽培キノコ類は2260億円だった。なかでも、原木によるシイタケ栽培は森林環境にも優しいとされている。

 乾(ほし)シイタケは大分県が国内生産量の約半分を占める。大分県椎茸農業協同組合によれば、「原木となるクヌギの木が大分県には多い」(担当者)のが背景だという。シイタケ栽培の由来についても、同組合の専用サイトが詳しい。さかのぼること約400年前、江戸時代初期。豊後の国佐伯藩千怒の浦(現在の大分県津久見市千怒)に源兵衛という者がいて、炭焼きをしていたそうだ。あるとき、炭にする原木に、シイタケが自然発生しているのを見つけ、原木に傷をつけ、シイタケ菌が付着しやすいようにしたのが始まりとされる。

 生シイタケは、原木よりも菌床栽培が圧倒的に多い。一方、乾シイタケはほとんどが原木からの栽培という。大分県は山深い場所が多く、生シイタケだと2~3日で劣化してしまう。そこで、乾かすスタイルが広がった。

 シイタケを原木で栽培するのには時間がかかる。たとえば、クヌギが原木に適するまでに成長するのに最低でも15年かかるという。原木にシイタケ菌を植え付けても、採取まで2年かかり、計17年を要する。

 クヌギを原木採取のため切ると、「切り株の横からまた生えてくるので、スギやヒノキのように植林する必要がない」(大分県椎茸農業協同組合の担当者)。そして、原木から採取した乾シイタケは「冷水で一昼夜をかけて戻すと、甘みが増す」(同)。

 このように手間暇がかかる乾シイタケだが、そのかいもむなしく、近年は日本の食生活の変化などで需要が低迷する。

 原木によるシイタケ栽培は高齢化が進み、続けていくのが難しくなっている。「原木栽培では90~120センチの木を動かすので、かなりの重労働になる」(日本特用林産振興会の担当者)からだ。春に原木へ植菌した場合、夏を2度越えるなど、菌が十分に育つまで時間がかかることも理由だ。

 これとは対照的に、菌床栽培は2~3カ月で育ち、菌床のブロックも1~2キロで扱いやすい。さらに、原木と菌床栽培のシイタケの味に違いがなくなりつつあるという。「昔は違っていたが、いまは菌床でも栽培技術が上がってきて、差がなくなっている」(同)。菌床でも、原木栽培に近い肉厚のシイタケを採取できるケースも目立つそうだ。

 空調栽培が基本となる菌床は、電力コストがかかるのが課題だ。少しでも全体の生産コストを下げようと近年、菌床そのものを中国からの安価な輸入品に頼る傾向にある。

 消費者庁はそんな産地の表示をめぐり、22年3月にルールを変更した。原木や菌床に種菌を植え付けた場所(植菌地)を原産地として表示することを義務付けたのだ。国産の乾シイタケを冷水で戻し、だしをとったり、食べたりする食文化が復活すれば、原木を通じて森林の循環活用にもつながるかもしれない。

 (浅井秀樹)

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