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古民家ブームが“空き家対策”救世主に!? 広がる古材の再生利用

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古材の再生利用の事例。写真はいずれも「一般社団法人 全国古民家再生協会」提供

 

 「古民家の活用がブームのようになっています」

 こう話すのは全国古民家再生協会の杉本龍一理事長だ。古民家には太い梁(はり)や大黒柱などが使われていることが少なくない。こうした太い木材はいま、手に入りにくくなっているのだという。

 「立派な古材が使われている家は、日本人の心に刺さります。太い木材が人気の支えになっているのではないでしょうか」(杉本さん)

 住む人のいない古民家から、入手困難とされる立派な古材を再利用するのは、見た目の味わい深さだけでなく、資源の有効活用につながる。さらに、空き家の放置問題の解決にも役立つ。豪雪地帯では、積雪に耐えられるように太い材料を使うことが多い。しかし、雪国の人はその価値に気づいていないことも少なくないという。杉本さんは「雪国に条件のいいものが残っていたりするので、その材料を他の地域に持っていき、再利用することもある」と話す。

 ところで、古民家とは、どんな建物なのだろうか。

 同協会によれば、築50年以上の木造住宅を指すという。登録有形文化財(建造物)が築50年を経過した歴史的建造物を対象にしているためだ。一方、建築基準法は1950(昭和25)年に制定され、それ以前のものを「伝統的工法の古民家」、それ以降を「在来工法の古民家」と呼んでいる。

 建築基準法ができて以降、土台をコンクリートで固めるなど「建物をどんどん固めていこうという方向性」(杉本さん)に変わってきたという。それ以前の伝統工法は、石の上に木造建築物を載せるもので、太い柱や梁の接合にくぎを使わず、組み合わせるだけ。伝統工法は「木が軟らかいため、接点が少しずつ動き、地震で揺れても元に戻る」(同)といった利点もあるそうだ。

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 古材は、新たな木造住宅に再利用しても大丈夫なのだろうか。

 杉本さんの説明では、木は切られて100~200年くらいかけて、徐々に強度が増すという。木にはセルロースという成分があり、これが少しずつ固まって強化されるためで、やがて徐々に風化していく。

 日本には約846万棟の空き家があり、空き家率は13.6%(総務省発表)。この空き家の1割ぐらいが古民家になる、と杉本さんは推測している。もっとも、空き家の定義があいまいで、田舎に帰省できる実家はあっても、普段は“空き家状態”のケースも目立つ。こうした事例まで含めると「空き家は1千万棟を超える」(杉本さん)というから深刻だ。

 古民家の古材を再利用しようとするのは近年、高所得層の人や、環境問題などへの意識が高い人などが多いとされる。古材の利用は手間などコストもかかる。材料の一部が腐っていることもあるからだ。

 それでも、太い梁は使いやすく、いまは見かけることが少ない大黒柱も利用価値が高い。活用するには、床下の状態のチェックなど専門家の診断が必要になるといい、実際には古材を使いつつ、新しい材料を加えて組み合わせることが主流だ。

 古民家ブームが一過性のものにとどまらず、古材を活用する取り組みが根づいて、伝統的な木造住宅の再評価が進めば、木の文化は新たな時代を迎えると期待される。

 (浅井秀樹)

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