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「豊かな自然をつなぎ、活用すべきか」議論 奄美・沖縄 世界自然遺産シンポ

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山極寿一さん(左)とイルカさんによる特別対談=浜離宮朝日ホール

 

 鹿児島県の奄美大島・徳之島、沖縄島北部のやんばる及び西表島が、ユネスコの世界自然遺産に登録されて1年になるのを記念し、「豊かな自然をつなぐ~奄美・沖縄 世界自然遺産登録記念シンポジウム」が7月7日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで開かれた。ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギなど希少な動植物が生息する地域をどのように守り、活用していくべきか━━。参加者らが話し合った。記念シンポは朝日新聞社の主催で、鹿児島放送と沖縄タイムス社、琉球朝日放送が共催、公益財団法人稲盛財団と公益財団法人イオン環境財団が協賛した。

 「熱帯雨林地帯は見たいもの(固有種)がなかなか見えない」。山極寿一・総合地球環境学研究所所長(前京都大学総長)が、シンガーソングライターのイルカさんとの特別対談でこう切り出した。奄美・沖縄など熱帯や亜熱帯地域にいる生き物たちは“緑のカーテン”のなかに身を隠し、「辛抱強くないと楽しめない」(山極さん)とした。

 そのうえで、山極さんは「(森林のなかで)人間はもともと弱い存在だった。隠れていながらも、目の前にいない動物の気配を感じるようになっている」と指摘。人間は長い間、森のなかで想像して頭に描き、感性を働かせることによって暮らしてきたからこそ、森の生き物たちの声が「メロディアス(旋律的)で、耳にやさしく聞こえる」(山極さん)。イルカさんも「ヒグラシの声を聞くと、前世のことを思い出しそうになる」と呼応した。静寂な森のなかでは、生き物の声とともに、風や水などいろいろな音が聞こえ、「その音を聞いて想像するのが森林歩きの秘訣(ひけつ)」だとも山極さんは話した。

 そんな豊富な自然が残る奄美・沖縄の世界自然遺産登録地に対し、イルカさんは「地元のみなさんが守ってきたから、ここにある。それはすごいことなのだと再認識していただきたい。もっと誇りを感じていただきたい。地球は一つの大きな生物、わたしたちは細胞同士。平和を求め、自然と共生して生きていけたらいい」とエールを送った。

 会場では、世界自然遺産登録地となった現地の様子が映像で紹介された。森林文化協会が発信する情報サイト「グリーン・パワー」に連載中の動物写真家、湊和雄さんらがとらえた希少な動植物の映像などが流された。

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パネル討論会に登壇した(左から)中静透さん、海津ゆりえさん、末吉竹二郎さん=同

 

 「登録地の生物多様性の保全と持続可能な利用」をテーマに識者3人によるパネル討論もあった。登録地の自然を保全しつつ、いかに活用するか。行き過ぎた観光地化に陥ることなく、自然保護や地元経済にもプラスにつながることについて、それぞれの知見から話し合った。

 「日本のエコツーリズムは地域づくりで始まる」と話す文教大学国際学部教授の海津ゆりえさんは、奄美・沖縄は原始的な自然と異なり、人がかかわってきたと指摘。「旅をしてこそ知れる」とし、観光客がメッセンジャーの役割を担えるとした。

 世界自然保護基金ジャパン会長の末吉竹二郎さんは「登録はゴールでなく、第一歩」とし、自分の裏庭だけを守る発想でなく、地球規模で共有する資産「グローバルコモンズ」を守ることの重要性を説いた。長期的、地球規模の視点で「リピーターとして訪れたくなるような管理をしてほしい。勉強する場に、教育する場にしてほしい」と訴えた。

絶滅危惧種だけを守るのでなく、そのエサも守る必要があるとしたのは森林研究・整備機構理事長の中静透さん。そのうえで「自然に近いところは住む価値が軽視されてきた。自然豊かなところに暮らすメリットが再評価されるべきだ」と強調した。奄美・沖縄の世界自然遺産が、再評価のモデルになることへ期待を込めた。

 (浅井秀樹)

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