見直しの「クリーンウッド法」 違法伐採の削減につながるか
世界の森林は熱帯雨林を中心に急速に減少し、劣化している。森林問題への国連の取り組みを外務省がまとめた資料によると、アジアやアフリカで自給農業が拡大していること、多発する森林火災、そして違法伐採が主因とされている。
このうち違法伐採は、生産される木材のうちインドネシアで50%、ロシアで10%との報告もあるという。
また、NGO(非政府組織)などからは、ミャンマー産木材が国連の禁止する「紛争木材」に相当し、輸入や取引を禁止するべきだとの指摘も出ている。
木材が違法に伐採されないように、各国が取り組みを進めている。
日本では「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法《CW法》)が2017年5月20日に施行された。5年をめどに施行状況の確認や必要な措置をとることが明記されており、今年は見直しの重要な年となる。
CW法導入の背景や意義を改めてみると、さまざまな課題が浮かび上がる。公益財団法人「地球環境戦略研究機関」の鮫島弘光主任研究員によると、違法伐採は20年ほど前までインドネシアなどを中心に横行していたが、最近はやや下火になっているという。欧米を中心に取り締まりを強化してきたことなどが背景だとされる。
日本でのCW法制定は、16年の伊勢志摩サミットの議論や、違法伐採の取り締まりが国産材の活性化につながるといった一部の与党議員の思惑なども手伝って結実した。日本の場合は「欧米のような規制法でなく(合法伐採木材の流通や利用の)促進法になっている」(鮫島さん)とされ、違法伐採木材の取り締まりというよりは、木材の合法性を確認していく形だ。法の運用上は、合法性の確認ができないものを「すべて排除できない」との課題もある。それでも制定自体には意義があり、「CW法で意識が変わった事業者が出てきて、効果はあった」(同)。
CW法には、木材関連事業者が木材の合法性を確認することや、合法伐採の木材を扱う事業者として登録できることなどが盛り込まれている。ただ、「登録事業者になってもメリットが何もない」との声も聞かれるようだ。CW法は世間一般に知られておらず、社会的な信用につながったり公共調達の際に有利になったりするわけでもないためだ。
CW法の罰則規定にある罰金についても疑問符が付く。
「確証がもてないないのに『合法だ』とうそをついた場合が対象だが、『わかりませんでした』といえば罰則を免れてしまうケースがある」。鮫島さんは指摘する。そもそも現在、林野庁にはこうした問題で立ち入り検査をできるような人的な余裕がなく、違法伐採された木材の輸入について、財務省の税関情報が林野庁に共有されにくい問題があるというのだ。
さらに、CW法において未登録の事業者が数多く存在し、「何の監査もされていない」(同)状況だとすれば深刻だ。
さまざまな課題を抱えるCW法だが、5年が経過した今年の見直しがとくに重要になる。果たして今後は、林野庁の監督態勢が強化されたり、税関情報が共有されるようになったりしていくのだろうか。
国内では近年、違法伐採が相次ぐ。丸太の値上がりや、所有者不明の山林が増えていることが背景にあるという。木材関連事業が集まり、日本最大の木材生産地・宮崎県などで“被害”も多いだけに、こうした問題にもCW法の適用が期待されている。
CW法が輸入材のみならず、国産材にも目を光らすようになるのか。見直しの本気度が注目される。
(浅井秀樹)