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発電に需要拡大の国産材 木材自給率は半世紀ぶり4割超に

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群馬県にある「吾妻木質バイオマス発電所」。年間送電量は一般家庭約2万8000世帯分の電力消費量に相当するという=オリックス提供

 

 木材の自給率は2020年、「40%台」まで48年ぶりに回復した。木材の総需要が減少し、輸入量も減るなか、燃料用などで国内生産量が増えているという。燃料用の木材に、何が起こっているのだろうか。

 燃料材として増えているのは、木質バイオマス発電用だ。石油などの化石燃料を除き、動植物などからつくり出される有機性エネルギー資源を燃焼し、発電するもの。木材を燃料とすることが多く、「今まで山に捨てられていたものを回収したり、枝葉の部分も使ったりするようになっている」(林野庁担当者)。

 林野庁によると、20年の木材自給率は41.8%、19年に比べ4.0ポイント上昇した。自給率は02年の18・8%を底に上昇傾向をたどり、20年まで10年連続の上昇となっている。

 昨年の総需要約7444万立方メートルに対し、国産材の利用量は約3115万立方メートル。このうち燃料材が約200万立方メートル(前年比28.8%増)にのぼる。

 木質バイオマス発電は、太陽光発電や風力発電などとともに「再生可能エネルギー」の一つとして、12年導入の「固定価格買取制度(FIT)」の対象となった。木質バイオマス発電でつくられる電力はコストが高いが、国が再生エネの推進で、買取価格を高く設定しているため、増えているのだという。

 そもそも、主に木材を燃やしてタービンを動かす木質バイオマス発電も、石油や石炭などを燃料とする火力発電と同じく、二酸化炭素を排出する。いったいどこが再生エネなのだろうか。

 二酸化炭素を吸収して成長する、樹木などのバイオマス資源。これを燃焼した発電は、京都議定書での取り扱いで「二酸化炭素を排出しない」とされている。京都議定書とは、1997年に京都で開かれた温暖化防止のための国際会議で、世界初の国際協定が取り決められた。

 樹木は、成長に際して二酸化炭素を吸収する。それを切り出して燃やすと、二酸化炭素が出る。植樹によって森林全体が維持されれば、二酸化炭素も新たに吸収される。つまり、全体として二酸化炭素の「排出」「吸収」は差し引きゼロとなる。さらに、木材を切り出す量よりも、樹木の成長が勝れば、二酸化炭素の吸収のほうが排出を上回る。

 日本木質バイオマスエネルギー協会によると、木質バイオマス発電用の燃料としては、農作物から発生するメタン発酵ガス、山に放置されてきた間伐などの未利用材、一般木材、製材工場で発生するおがくず、建築廃材などがある。このうち、一般木材や未利用材が大半を占めている。

 同協会の藤江達之専務理事によると、昨今は新型コロナウイルスの影響で製材や製紙用などの木材需要が減少。林業関係者は従来の仕事が少なくなるなか、燃料用に品質のあまりよくない木材を切ることで生活を支えてきたという。

 今後も、木質バイオマス発電で計画されている施設があることから、燃料用の木材の需要は「しばらく伸びる」(前述の林野庁担当者)とみられている。

 課題もある。バイオマス発電所は燃料の置き場など、広いスペースが必要となる。燃料を運ぶコストもかかる。発電所を導入するのは、山に近くて立地がいい山のオーナーや、製材所の経営者が多い。誰もが簡単に導入できるものではない。

 加えて、木質バイオマス発電が増えることで、山で働く人たちの仕事も増えていくとも限らない。国産材の需要拡大が今後も続いていくのかは不透明だ。林業は「保守的な業界で、ただちに生産量を増やせない」(藤江さん)という背景もある。

 長期的な視野に立ち、日本の林業を維持、成長させていくうえでも、木質バイオマス発電への継続的な支援が必要になっている。

 (浅井秀樹)

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