時評

人気の「自然共生サイト」~更なる展開も三重の亀山市から

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「自然共生サイト」亀山里山公園みちくさ管理運営協議会主催の講座の様子(写真提供、亀山市)

 新たな自然保護地の仕組み「自然共生サイト」が人気である。環境省の当初の目標は今年度100カ所だったが、前期だけでそれを大きく超える122カ所となった。2023年10月に行われた認定証授与式会場は活動団体や企業関係者らの熱気があふれていた。

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多くの関係者が参加した前期の認定証授与式=2023年10月、東京都千代田区

 

 自然公園等の保護地かどうかに関わらず、民間の取り組みなどによって生物多様性が保全されている区域を、審査委員会の判定をもとに環境大臣が自然共生サイトと認定する。

 この制度は、国際約束である2030年までに陸域と海域の30㌫を保護地とする30by30達成に資する国内の仕組みとして考案された。認定された区域が従来の保護地でない場合にOECM(Other effective area-based conservation measures:その他の効果的な地域指定に基づく保全措置)の国際データベースに登録される。
 保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域を指し、お世辞にも明快で魅力的な表現とはいえないOECMだが、日本では新たな国内認定の工夫をしたことが、思いがけない展開を生みつつある。

 自然の保護や保全といえば、人間の利用を制限して、自然を守ること。あるいは、ワイズユース(賢明な利用)に限ることなどで豊かな自然を継承すること。つまり、保護・保全地とは、土地の所有者や利用者等に対して対象地の自然を利用・改変する権利に何かしらの制限をかけた場所のことだ。だから自然公園等の土地をベースにした保護地を拡充する政策の実行にあたって、とかく環境部局は地権者とはもちろん、役所内部でも事業部局との調整に頭を悩ませる。

 ところが自然共生サイトの場合は認定されても、申請者に新たな権利制限が課されることはない。これまで行われてきた土地のマネジメントを少なくとも5年は継続することが想定されているだけで、新たな権利制限は発生しない。

 この仕組みは世界遺産とそっくりだ。まず、地元からの発議に基づく。「自然共生サイト」を「世界遺産」に、「認定申請者」を「登録申請国」に、「審査委員会」を「IUCN」(自然遺産の場合)か「ICOMOS」(文化遺産の場合)に、「国(環境大臣)」を「国連(UNESCO)」に、それぞれ置き換えると世界遺産登録の仕組みとなるわけだ。つまり、どちらも自主的な取り組みとその成果に、権威ある機関がお墨付きを与えるという仕組みなのである。

 この仕組みを更に展開した自治体が現れた。三重県亀山市である。自身、「亀山里山公園」の自然共生サイト認定を受けた。町なかに残った耕作放棄地に産業廃棄物処理施設を建設する計画が浮上したが、市は周辺住民の要望に沿って買い取り、自然公園条例を作って里の生物多様性を生かした整備を行い、市民団体らと協議会を作って活動成果を上げている素晴らしい事例だ。

 だが、これに増して驚いたのは、国の自然共生サイトに平行して、市独自の「かめやま生物多様性共生区域」を認定する制度を作り、23年7月に募集をスタートさせたことだ。国と同様の趣旨と要件、審査基準等の制度を、亀山市はなぜ始めたのか。

 市の担当者、上野篤史さんに聞いてみると、国のOECM検討会議で出てきていた自然共生サイト候補事例は、大手企業によるものや著名な自然共生プロジェクトが多く、ネイチャーポジティブを亀山市で展開するには、もっと多様な主体のささやかな取り組みも拾い上げないといけないことに気づいたという。幸い、早くからエコシティに取り組んできた市には有識者や活動家も含む「亀山市環境未来創造会議」があるので、そこで市独自の制度が議論されたという。市は相談段階から申請者の伴走支援を行い、申請内容の簡略化等で取り組みやすくした結果、7件の応募に結びついた。

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「かめやま生物多様性共生区域」認定審査会による現地確認(写真提供、亀山市)

 

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 こうした申請に基づく、いわば世界遺産方式には弱点もある。原則として認定する側にはサイトを維持する責務がない。その代わりに環境省は認定サイトの団体等と活動を支援する企業とのマッチングの取り組みを開始した。亀山市の場合は認定の市場価値を高めるために共生区域のブランド化や、国の自然共生サイト認定取得支援などの伴走支援を続け、更に商工会議所や農林業者へ認定取得の働きかけ、多様な主体と認定区域を巻き込んだ取り組みを進めていきたいという。

 今年度前期で認定された自然共生サイトの合計面積は約7.7万㌶。まだ国土の約0.2㌫だ。現在の保護地が陸域で約20.5㌫であることを考えると、30by30達成には、サイトと支援企業とのマッチングに取り組む、亀山市のような、環境省と現場の間でコーディネートする中間支援組織の活躍が大きな鍵となりそうだ。

 (京都大学名誉教授・京都市都市緑化協会理事長 森本幸裕)

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