日本アルプス 四季を旅する
刻む生命のかたち

南アルプスの三伏峠から烏帽子岳へ向かう稜線には、斜面に沿って幹を大きく曲げたダケカンバの林が広がる。
訪れたのはある年の11月初旬。荒天によって稜線はこの時期としては珍しいほど白く染まっていた。登山道は途中から雪に覆われ、登り詰めると完全な雪道へと変わった。幸い、先行者のしっかりとしたトレース(踏み跡)があったため、今回はアイゼン(滑り止めとして登山靴の底につける金属製の爪)を使うことなく歩を進めることができた。
三伏峠を越えると、雪をまとったダケカンバの樹林が広がっていた。葉を落とした枝は空に細かな線を描き、幹は地面を這うように曲がりながら複雑に伸びている。白い雪と樹皮のまだらな模様、そして重なり合う枝が織りなす造形は、まさに山岳地帯ならではの光景だ。厳しい積雪や強風に耐えてきた年月がその姿から克明に伝わり、力強い生命力に圧倒された。
薄く積もった雪は、これから訪れる本格的な冬の厳しさを予感させていた。山が秋から冬へと移り変わる、その境目の光景を写真に収めた。
撮影地:静岡県静岡市
(大島隆義)

