日本アルプス 四季を旅する
高度上がる緑と季節

日本アルプスの麓では桜や春の野花がほぼ咲き終わり、着実に季節は進んでいる。樹々の芽吹きが始まり、色鮮やかな新緑の彩りは、麓から山々の上へ上へと移りゆく。アルプスの稜線近くはまだまだ雪深いが、麓へと流れ出る豊富な水量の川を見れば、確実に季節の移り変わりが実感できる。
そんなアルプスでは、山域や前年の積雪などの状況にもよるが、雪解けで地表が露出したところから野花が開花し、それと競うかのように樹々の芽吹きも始まる。花の開花と新緑が同時期となり、季節が凝縮されている印象だ。
標高が上がるにつれてその凝縮度は高まり、2,500m付近では7月でも桜の花が見られることもある。ここでは四季ではなく、春がない三季や、二季と言ってもよいくらいだ。
この時期は芽吹きや新緑のブナが被写体の代表格だが、今回は雪解けから目覚めた「コバイケイソウ」にレンズを向けた。数年おきにしか開花しない周期開花の特性を持つ高山植物で、乳白色の小花が沢山集まり円錐状に咲く姿が美しい。それに劣らず、先が尖った大きな楕円形の葉が密集した表情はなんとも絵になり、好きな被写体だ。
前日の雨を含み瑞々しさを増した葉はより緑鮮やかに見え、曇天の柔らかい光も幸いし、色彩をしっかり写真に撮り込めることができた。
撮影地:長野県小谷村
(大島隆義)

