日本アルプス 四季を旅する

山上のサンゴ礁

   

 中央アルプスの千畳敷は宝剣岳の東斜面に位置しているカール地形(圏谷)で、約2万年前の氷河期に形成されたという。

 主稜線が壁となっているため、西からの強い風が常に吹きつける厳しい稜線上とは違い比較的穏やかな場所だ。冬のアルプスは常に雲に覆われ、吹雪いているイメージを持っている人もいるかもしれないが、中央アルプスでは荒天と好天をくりかえし、晴天が続くこともある。

 雪が降っていても翌日の未明に天候が回復する予報となれば、撮影チャンスの到来だ。まだ積雪量も多くはないが、それでも植物や岩はほとんど雪に覆われて、なだらかな起伏のある雪原にダケカンバが点在する風景が広がるのはこの時期ならではの光景だ。樹々の幹や枝の全てに満遍なく雪や霧氷が付着して、まるで山上のサンゴ礁のようだ。

 夜が明け朝陽が当たってはいたが次第に雲も出始めた。ちょうど稜線部分だけが陰ると、この白い世界の立体感と遠近感の深みが増したように感じられた。

 撮影地:長野県駒ヶ根市

 (大島隆義)

 

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