日本アルプス 四季を旅する

朝露のジュエリー

 

 岐阜県と長野県にまたがり北アルプス南部に位置する乗鞍岳。長野県側の乗鞍高原から乗鞍岳の畳平まで乗鞍エコーラインがあるが、マイカー規制のためバスやタクシーを利用することになる。この日はバスの始発に乗車した。

 終点の畳平から2つ手前の停留所の「大雪渓・肩の小屋口」で降車することにした。ここは名前の通り8月でも雪が残る万年雪の雪渓で、夏スキーを楽しむ人も多いが、私にとってこの景観は魅力的な被写体の一つだ。

 この時期の雪渓はスプーンカット(※注)が造形的で美しく、この朝は気温差により山靄も出て、更に絵になる光景だった。辺りには雪どけから目覚めた高山植物が沢山咲いており、華やかな夏山の景色が広がっていた。

 開花時期が早めのチングルマ(稚児車)は花の時期が終わり、羽毛状の果穂の姿となっていた。真上からカメラを覗いてクローズアップにすると、朝露の水滴が宝石をちりばめたようについていて、繊細な美しさを見せてくれた。

 ※注:日中にとけた雪が夜間冷えて再び凍ることを繰り返すことで、スプーンで何ヵ所もすくったような形状になること

 【撮影地】長野県松本市

 (大島隆義)

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