「自然での原体験大切」和歌山で森林づくりシンポ、尾木直樹さん講演
国民参加の森林(もり)づくりシンポジウム(和歌山県、森林文化協会、国土緑化推進機構、朝日新聞社主催)が11月29日、和歌山市の県民文化会館で開かれました。教育評論家の尾木直樹さんの基調講演に続き、森林や教育関係者が「これからの森林教育」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

講演する尾木直樹さん
この催しは、来秋に和歌山県内である全国育樹祭の事前イベントとして開催されました。
約200人の参加者を前に、尾木さんは「自然教育の魅力―AI時代にはぐくむ力―」と題して講演しました。自然での体験が豊かな子どもの方が自己肯定感が高いことをデータを踏まえて指摘し、それを高めるには「木育や緑育といった自然を生かした教育や、森林などでの原体験が大切だ」と訴えました。「自然での予定調和でない体験が、脳の忍耐強さなどをつかさどる領域を鍛える」などとも話しました。

パネルディスカッションの様子
討論では、和歌山県が全国に先駆けて取り組んできた森林教育に関わる教育関係者や林業関係者らが、子どもたちが継続して自然に興味を持つために大切なことについて意見を交わしました。
マルカ林業山林部課長の浦西大樹さんは「小中学生で森の役割や林業について学び、高校生や大学生になって、木を伐採した後、森を育てるといったプロセスを学ぶ、といった継続的な関わりが必要ではないか」と指摘しました。

発言する浦西さん
県森林インストラクター会会長の岡田和久さんは「大人が最低限の見守りをしながら、子どもが達成感や冒険心を味わえることを、ちょっと手助けしていく、そんな形がいいのではないか」と語りました。

発言する岡田さん
めぐみと森のようちえん運営団体manma place共同代表 の佐道匡子さんは「生活が自然と切り離されているから難しさはあるが、自分たちが自然の一部として生きているということを、もっと実感してもらえたらいいと思いながら、試行錯誤している」と悩みを語りました。

子どもと向き合ってきた経験をもとに発言する佐道さん
三重大教育学部の平山大輔教授は「森が持つ機能として炭素吸収や固定、防災といった点はよくテーマに上がるが、森の機能はもっとたくさんある。ほかの生き物との関係がまだ未解明なことも多い。だから、例えば生物多様性を探求するような森林教育があってもいいと思っている」などと語りました。

発言する平山教授

コーディネーターを務めた大浦教授
コーディネーターを務めた和歌山大観光学部の大浦由美教授は「子どもたちに好奇心の芽を植えること、そして、(大人たちが)見守り、待つことが大切だ」と締めくくりました。
