循環時代に回帰を 茨城で「国民参加の森林づくりシンポ」
「国民参加の森林(もり)づくりシンポジウム」(茨城県、国土緑化推進機構、朝日新聞社、森林文化協会主催)が1日、茨城県常陸太田市で開かれた。世界的建築家で東京大特別教授・名誉教授の隈研吾さんが「新しい時代」と題して基調講演。「循環の時代に帰らないと、人類はもたない」と訴えた。
「新型コロナの後、我々は新しい時代に遭遇するといわれている。私が持っているイメージは、歴史を反転する時代」
こう強調した隈さんは、人類の歴史が「自然から離れて、人工物や都市に向かう坂道だった」とし、「“集中の極致”が、超高層ビル。当時は箱の中に人を詰め込めば、人間は一番効率的に仕事ができると考えられていた。ですが携帯もインターネットもある今の時代には、非効率的で、全く適切ではない。そしてコロナ下では『密の極致』といわれた」と解説した。
自身の建築物で転機となったのが、栃木県の那珂川町馬頭広重美術館だったという。「僕が木に目覚めたのは2000年ごろから。初めて屋根すべてにスギを使った。里山と生活がもう一度一体になることをやろうとした」
地球温暖化対策や災害予防などにもつながる森林の重要性を訴え、「循環の時代に帰らないと、人類はもたない」と語った。
「森とまちづくり」をテーマにパネル討論もあった。
筑波山の環境保全などに取り組む原忠信・筑波大准教授は「仕事でもあり遊びでもあるという存在がこれからは大事。日常生活がもっと山とつながっていかないと」と説明。アウトドア専門店を展開する「ナムチェバザール」の和田幾久郎(いくお)社長は「里と山をつなぐように歩くことで、里の歴史を感じ、地域の人とのふれあいもうまれる」とし、写真家の松本美枝子さんも「親しみやすく、人間社会と密接につながっているのが茨城の森の魅力」と応じた。
一方で、「(和紙の原材料の)楮づくりの後継者不足・高齢化が一番の課題」(大子那須楮保存会の仲沢二三子さん)、「(漆の樹液を採取する)漆かきだけでは生計を立てられない」(木漆工芸作家の辻徹さん)といった声が上がった。
こうした森林保全を担う人びとの暮らしを守るための課題をふまえ、蓮見孝・筑波大名誉教授は「森を守っていくためには、次世代に思いを伝えていかないといけない」と呼びかけた。