昆虫研究の原点、小千谷に 吉澤和徳・北大准教授「イグ・ノーベル賞」 /新潟県
- 2017/09/18
- 朝日新聞
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ユーモラスで意義深い研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」を、雌雄の交尾器が逆転した昆虫を発見した4人が受賞した。チームの中心は、小千谷市出身で北海道大学准教授の吉澤和徳さん(46)。その昆虫研究のルーツは故郷にあった。
受賞につながった昆虫は2010年にブラジルの洞窟でチームの一員が見つけた「トリカヘチャタテ」。雌がペニスのような器官を持ち、雄の体内に差し込んで40~70時間交尾することを吉澤さんらが解明し、14年に発表。「性差とは何かを考えさせる発見」として評価された。
吉澤さんは「雌雄逆転の理由は分かっていませんが、『女の子におちんちんがついている』というのは単純に面白い。別の昆虫や他の生き物にいる可能性もある」。
自然豊かな小千谷の野山が昆虫研究の原点だ。「言葉をしゃべる前に虫を捕まえたり、ごきぶりホイホイを眺めたりしていたそうです」。吉澤さんのホームページの自著紹介欄には学術書に並び、小千谷小学校1年の時の夏休みの宿題「ぼくがつかまえたこうちゅう」が掲載されている。
小千谷高校2年で昆虫研究の道に進むと決め、九州大学へ。入学直後、研究室を訪れ「3年になったらコガネムシを研究したい」と訴えた。だが甲虫は別の人が研究しており、「チャタテムシ」を勧められた。
カビなどを主食とする体長数ミリの昆虫。多湿を好み、家の中でも見られ、大発生する時もある。「ほとんど注目されなかった昆虫で、研究者もほとんどいない。これまでに国内外で百種以上の新種を発見しました」。トリカヘチャタテもその新種の一つ。男女の入れ替わりを描いた平安時代の古典「とりかへばや物語」から名付けた。
受賞について「大変光栄ですが、宝くじに当たったようなもの。研究は未知のものを掘り起こし記載するというごく普通のもので、そういう意味で分類学、形態学が賞をもらったと考えています」と感想を述べた。さらに「子ども時代から続けてきたことが評価されてうれしい。続けたからといって、幸運がつかめるわけではないが、幸運は続けないとつかめない」と、昆虫少年少女たちにエールを送った。