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ギンリョウソウは、ゴキブリに種子を散布してもらう植物だった!

植物には鳥類や哺乳類といった脊椎動物に食物(果肉) を提供する見返りに種子を散布してもらう種が多く知られているが、昆虫が種子散布の役割を担う例は、種子そのものをアリ類に運ばせる例を除いて知られていなかった。熊本大学大学院先端科学研究部のグループは、ギンリョウソウ(ツツジ科)がモリチャバネゴキブリに果肉を提供するのと引き換えに種子を散布してもらうという 相利共生関係にあることを発見した。ゴキブリによって種子散布される植物は、世界初の報告となる。また、種子散布者が飛べないアリではなく、 飛べる昆虫であるという点においても、初めての発見例となる。この成果は英ロンドン・リンネ協会の植物学雑誌「Botanical Journal of the Linnean Society」に掲載された。

 

グループは、熊本市内の2ヵ所の森林においてギンリョウソウの果実に訪れる動物に関する観察を2年間にわたって昼夜を問わず行なった。その結果、

①鳥類や哺乳類は果実に興味を示さない。

②地表で暮らすいろいろな節足動物が果実に誘引されたが、主に夜間に活動するモリチャバネゴキブリ( 大半が成虫)だけが常に果肉を摂食し、糞の中にギンリョウソウの微細な種子(長さ0.3mm、幅0.2mm) を排出した 。

③排出された種子は果実から直接採取した種子と同等の生存率を維持していた(排出種子52.0% 、採取種子49.3%)。

④種子入りの糞をギンリョウソウの株近くに埋め、1年後に回収して種子の状態を調べたところ、発芽こそ認められなかったものの、32.0% の種子が生存していた。

 

ギンリョウソウの種子は特定の菌類と関係を結ばないと発芽できないため、人為的に発芽させることは非常に困難であり、これらの調査結果から、「ギンリョウソウはゴキブリに種子を散布してもらう植物である」と判断した。ギンリョウソウがゴキブリを利用して種子を散布するよう進化した理由ははっきりしないが、その果実と種子は、次のような特徴を持つ。

①鳥類・哺乳類からみたとき、果色、果香そして味もしない果実は魅力が低い。

②果実の成熟期がモリチャバネゴキブリの年1回の羽化期(成虫の出現期)とほぼ一致する。

③果実は熟すと落下する、あるいは果茎自体が倒れる。その結果、モリチャバネの生活場所である地表面で熟果が利用可能となる。

④種子が昆虫の体内( 消化管) も通過できるほど微細である。

⑤頑丈な種皮をもち、消化管を通過しても破砕されない。

 

また、モリチャバネゴキブリも種子散布者として都合の良い、以下のような特徴を備えている。

①個体数の多い普通種であるうえに、果実によく訪れる。

②種子発芽に必要な菌類が存在する地中近く( 地表面) がその生活場所であり、種子入りの糞をそこに排出する。

③種子排出までの所要時間が長い( 摂食後、3~ 10時間)、あるいは成虫が飛ぶことから遠方への種子散布も時として起こる。

 

こういった双方の特徴を考え合わせ、ギンリョウソウにとってモリチャバネゴキブリは、 かけがえのないパートナー であるとみられる。

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