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大好きな本、ここにある 南三陸、震災越え「手にとる幸せ」 書店・図書室オープン

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町に、昨年から今年にかけて小さな書店と図書室ができた。オープンさせたのはいずれも女性で、本好きが集うグループのメンバー。震災を経験し、「本を手にすることができる幸せ」を痛感した女性たちは、「本で人が集まる場所」を町に広げようと活動を続ける。

 今年3月、「南三陸さんさん商店街」に「NEWS STAND SATAKE」はオープンした。新聞販売とカフェを兼ねた店舗の一角には、新刊と古本を合わせて約100冊が並ぶ。店長は佐藤知里(ちさと)さん(29)。震災後にできた、町で唯一の本屋だ。週末は各地からも客が訪れる。
 震災時は仙台市にいて大学生だった。南三陸町に住んでいた両親と祖母は無事だったが、文具店だった自宅は津波で流された。大学卒業後、仙台市の大型書店などで働き、本を通じて人とつながる面白さを知った。
 父が経営する新聞販売所が、さんさん商店街への出店を2013年に決めた。新聞を仕分けする作業場で昼間はカフェを開き、本や雑貨も置いて、人が集まる場所を作りたい。父の構想にひかれた。小さい頃から図書館や町の本屋によく行っていたことを思い出した。「ゆっくりお茶を飲んだり本を読んだり。そういう場所が町に必要では」と思い、14年に故郷に戻って開店準備を始めた。
 開店を後押ししたのが、「みなみさんりくブックス」という本好きが集まるグループだ。町に本と出会える場所を広げようというプロジェクト名でもある。佐藤さんは早速メンバーになり、本棚の選び方、扱う本のジャンルなどの相談にのってもらった。
 「みなみさんりくブックス」を発案したのは栗林美知子さん(38)。本を扱う各地のイベントに参加するほか、地元でも企画展などを開催。昨年6月には、沿岸部から少し離れた入谷地区にある廃校になった小学校の教室を使って、「かもしか文庫」という図書室を作った。小学校には約2千冊の本が眠っていた。
 和歌山県出身の栗林さんは、震災時、東京で働いていた。2年ほど被災地を往復して、ボランティアに参加。被災していない自分が怠けていてはいけないという思いもあって、本を読む余裕はなかった。
 13年に被災地の女性を支援するNPOが立ち上がることになり、その準備のため、栗林さんは東京の仕事をやめて、南三陸町に近い登米市に移住。被災した人のため必死に働く一方で、本に触れる時間が恋しくなった。夜、寝る前のわずかな時間に東京から持ってきた文庫本10冊を何度も読み返した。本の世界に没頭できる貴重な時間。でも誰かと本の話をすることは、まだできなかった。
 震災から4年ほどたったころ、南三陸町でやりたいことを語るトークイベントで、思い切って「本のある場所を作りたい」と手を挙げた。「私も本が好き」といってくれた人たちと「みなみさんりくブックス」ができた。この夏は「かもしか文庫」で「旅」をテーマにした企画展を開催中だ。
 「本はネットでも買えるけど、書店や図書館では思わぬ一冊に出会えることも。本が好きということで人が集まり、本を手にとる幸せを分かち合える。そんな空間をゆっくり広げていきたい」

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