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水俣、地下に眠る水銀 埋め立て地、液状化など懸念

 水俣病のような被害を二度と起こさない決意が込められた「水俣条約」が16日発効し、水銀が世界的に規制されることになった。ただ、条約名に冠された熊本県水俣市には、かつて垂れ流された水銀が今も埋められたままだ。この先も適切に管理し続けられるのか。懸念は根強い。

 不知火海に面した広大な埋め立て地に芝生の広場やバラ園、テニスコートなどが並ぶ水俣市の公園「エコパーク水俣」。その地下には、水銀を含む汚泥が今も眠っている。
 埋め立て地は、水俣病の原因企業チッソが長年水銀を含む排水を流してきた水俣湾の奥部にあたる。水銀値の高い汚泥がたまったエリアを鋼板で囲って海と仕切り、そこに水銀値が比較的低い沖合の汚泥を浚渫(しゅんせつ)して埋め立て、さらに、汚染されていない山の土で覆った。全体で約58ヘクタール。1982~85年に鋼板を設け、90年に埋め立てが完成した。
 鋼板の耐用年数は約50年とされていた。熊本県は、腐食の進行が想定より遅いとして少なくとも2050年ごろまで性能を維持できるとしているが、その後の方針は決まっていない。
 元国立水俣病総合研究センター国際・総合研究部長で、今も水俣で水銀の研究を続ける赤木洋勝さん(75)は、地震で埋め立て地が液状化し、水銀を含む水が地表に噴き出すことを懸念する。「水銀を集めて囲っただけの場所。汚染が残ったまま条約の地をアピールするのはちぐはぐだ」と話す。
 熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は、750億円かければ、埋め立て地の水銀汚泥を掘り起こし浄化することができる、との試算を14年に発表した。鋼板や護岸はいずれ更新しなければならず、この先、大地震や大津波に襲われるかもしれない。「ずっと未来まで鋼板や護岸をつくり続けるのか。後世に大きな負の遺産を残したままでは、水俣病の教訓を生かすことにならない」と指摘する。
 水俣条約12条は、水銀で汚染された場所を「汚染サイト」として特定し、リスクを評価して管理する努力を締約国に求めている。だが、埋め立て地について熊本県は「今も安全性を確認しながら管理しており、問題はない」、環境省も「既存の土壌汚染対策法で対応が可能だ」として、汚染サイトとすることに消極的だ。

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