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山腹崩壊は、雨水及び地形・地質による要因が大!

7月の九州北部豪雨による山地災害の発生を受けて、流木災害等に対する治山対策検討チームを結成し、7月19~21日に森林総合研究所、九州森林管理局、福岡県、大分県と合同で、流木災害の実態把握を行うことを目的に山腹崩壊や渓流荒廃状況、流木の堆積状況について現地調査を実施した。調査結果の概要は次の通り。なお、今回の調査は、一部の山腹崩壊箇所を抽出して実施したものであり、今後、学識経験者等の意見を聴きつつ、必要に応じて追加調査を行う予定である。

 

【山腹崩壊等について】

(1)調査を行った朝倉市及び東峰村では、小規模な山腹崩壊が多数発生しており、日田市では、比較的規模の大きい山腹崩壊が発生していた。

(2)調査を行った地域の地質は、変成岩、安山岩、凝灰岩など多様であり、特定の地質で崩壊が発生していると言えるものではなかった。

(3)調査を行った箇所は、豪雨により地下に浸透した水が集まりやすい凹地形で山腹崩壊が発生しており、その崩壊土砂の流出により渓流が荒廃していた。

(4)調査を行った箇所において、山腹崩壊が発生した森林と発生していない森林があったが、間伐等施業実施の有無による崩壊発生の関連は確認できなかった。

(5)崩壊地上部斜面等に根が露出している立木を調査したところ、根系の深さは約1~2m程度であり、地質条件に応じた深さまで成長していた。また、崩壊は表層崩壊が多かった。

(6)調査を行った崩壊箇所では、作業道や土場等は確認できず、作業道等が原因となり崩壊が発生したものは確認できなかった。

(7)山腹崩壊に伴い、一部治山施設の損壊が認められたが、崩壊土砂・流木の捕捉が確認されており、下流への被害軽減効果があったと認められた。

 

【流木について】

(1)山腹崩壊地直下の渓流に残存している流木は根付きであったことから、流木は、立木が崩壊土砂とともに流下したものと認められる。

(2)渓流内に堆積している流木は根付きの状態のものがほとんどであり、幹は折損しているものも多数あった。なお、林内で伐採されたと考えられる樹木も存在していたが、ごく一部であった。

(3)山腹崩壊地内及び崩壊地直下に残存している倒木もあるものの、崩壊面積から推定すると一部にとどまっており、大半は、洪水により崩壊土砂とともに下流域へ広範囲に流下したと推察される。

 

【まとめ】

今回、調査した結果、山腹崩壊等が発生した箇所は、崩壊していない箇所と比較した場合、森林の状態(樹種、林齢、間伐の有無)による関連は確認できなかった。

このことからも記録的な豪雨による特定の箇所に集中した雨水が要因となり、森林の有する土砂崩壊防止機能や土砂流出防止機能の限界を超え、山腹崩壊等が発生したものと考えられ、雨水及び地形・地質による要因が大きいものと推察される。

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