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東南アジア熱帯雨林の「一斉開花」予測に成功

国際農林水産業研究センターと九州大学はマラヤ大学、マレーシア森林研究所、マレーシア工科大、首都大学東京、高知大学、広島大学、森林総合研究所と共同で、東南アジアの熱帯雨林に特徴的に見られる「一斉開花」現象を予測するモデルを開発した。一斉開花は主に低温や乾燥などの環境要因によって起こると考えられてきたが、そのメカニズムは解明されておらず、これまで一斉開花を予測することは困難だった。

 

そこでマレーシアにおいて、フタバガキ科林業樹種の一つであるShorea curtisiiとその近縁種であるS. leprosulaの開花をモニタリングすると同時に、フタバガキ科の開花遺伝子(FT遺伝子及びLFY遺伝子)の葉と芽における発現量を4年間にわたって調べた。この間に2回の一斉開花が観測され、いずれも開花の少なくとも1カ月前に葉と芽の両方で開花遺伝子の発現が開始されることが分かった。降水量や気温のデータと開花遺伝子の発現量の変化との関係を数理モデルで調べると、一定の乾燥かつ低温の状態(9カ日平均気温が25.7℃以下かつ日降水量が182mm以下)が起きたときにのみ、9~11週間後に開花遺伝子が発現し、一斉開花に至ることが明らかになった。開花遺伝子が発現するための引き金となる気象条件と、一斉開花に至る期間が明らかになったことから、降水量と気温のデータから一斉開花の予測ができるようになった。

 

これまで、フタバガキ科樹種(ラワン材)の実生苗木の生産は、天然種子の採種に依存していたため計画的には行えなかった。しかし今回、気温と降水量から一斉開花の地域や時期を予測できるようになったことは、実生苗木の安定生産や木材の安定供給に貢献すると期待される。また一斉開花の変化を予測することで、森林生態系への影響を配慮した林業の施業体系の提案にも役立つと考えられている。

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