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神秘の森、千客万来 SNS発「異空間に来た気分」 九大の森

 「『もののけ姫』みたい」。池を囲む静かな森の一角で歓声が上がる。福岡県篠栗町にある「九大の森」。水中から太い幹が突き出て、樹影が水面に映り、幻想的な雰囲気を醸し出す。SNSで人気に火がつき、訪問者が急増。人々を魅了してやまない。
 農業用のため池「蒲田池」を囲む「九大の森」は九州大学と篠栗町が共同管理している。広さは約17ヘクタール。元々は農学部の演習林だったが、地域貢献で2010年に一般開放された。約2キロの小道をたどると池を一周でき、地元の人が散策などに利用している。
 演習林長でもある榎木勉・九大准教授によると、来訪者が増え始めたのは今年の春から。年間通じて2万人台だったのが4月は約6千人、5月は1万2千人以上が訪れた。SNSなどで紹介されたことが理由とみられるが、「ここまで増えるとは」と榎木さんは驚く。
 今もインスタグラムにはコメントが並ぶ。「絵画の世界のよう」「神秘的な森ですね。こんなところが福岡にあるなんて!」。SNSで知って訪れたという福岡県志免町のサロン経営、横山摩弥さん(42)は「しばらく歩いて、ようやくたどり着くから異空間に来たような気分になります」。
 幻想的な風景を形作っている木はヌマスギだ。北米・ミシシッピ川流域の湿地帯などを原産地とする外来種。約40年前、造園学を専門とする九大の加藤退介教授(故人)が植えた。
 当時、造園に広く利用され、ほとんどは乾燥した土地に植えられていたが、湿地という本来の環境で育ち、生命力が増した。膝根(しっこん)(空気を求めて水中から突き出た根)が見られるだけでなく、根元付近は周囲3メートルにも及ぶ巨木に育ち、美しい光景となっている。
 木の配置も絶妙だ。6本のヌマスギが正六角形に並び、中心にもう1本が立つ。なぜ、加藤教授がこのように植えたか、今となっては定かでない。
 「ただ、一つ言えるのは」。榎木さんは言う。「並びが四角形や一列だったらここまで人気を呼ばなかったでしょう。どこから見ても同じように見えるので神秘性が増すのでは」
 九大の森はJR門松駅から約2キロ。開放時間は4~9月は午前6時から午後6時まで、10~3月は午前7時から午後5時まで。

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