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津波生き抜いた桜、守って 松本零士さん、絵本作り 気仙沼、伐採計画

 「銀河鉄道999」や「宇宙戦艦ヤマト」で知られる漫画家の松本零士さん(79)が、気仙沼市民に約40年にわたって親しまれた桜をテーマにした絵本を作る。東日本大震災後、堤防の改修工事で伐採されることになり、心を痛めたためだ。松本さんは「人命を守る堤防は大事だが、歴史ある桜も守らなければ」と話す。
 桜は、同市中心部を流れる神山川沿いにある約50本。震災の津波は川の堤防を越え、桜並木にも浸水した。地元住民によると、木々は一時弱ったが、年を追うごとに回復。昨年から震災前のような満開の桜が見られるようになったという。
 だが県は、川からあふれた津波で周辺に大きな被害が出たことから、コンクリートで堤防を強化することを決めた。
 50本の大半が伐採されることになったため、住民らは計画に反対。近くで洋菓子店を経営する小野寺恵喜さん(69)が、親交のあった松本さんに協力を呼びかけた。松本さんは「子どもたちにもこの桜や震災のことを知ってほしい」と絵本作りを思いついた。
 絵本は「桜ものがたり~アーシャと花の妖精」で、桜を育てた人をモデルにした「そうさん」と、桜の妖精「アーシャ」らが神山川を舞台に織りなす物語を描く。津波で街が壊滅し、桜も弱るが、アーシャらは自分の命を顧みずに桜を生かそうとし、少しずつ花を咲かせていく。やがてそうさんは亡くなるが、満開の桜が市民に希望を与えていく。今年2月から作り始め、秋には完成の予定だ。
 県も伐採する桜の数を再検討している。今月中にも地元説明会を開き、了承を得た後に着工する。
 松本さんは「この桜は高いメッセージ性を持っている。少しでも多く残してほしい」。絵本を震災の伝承にも利用してほしいと願っている。

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